注目の論文

ダウン症候群の原因分子を判別

Nature Neuroscience

2010年7月19日

Pinpointing the molecular culprit in Down syndrome

Nature Neuroscience

Nature Neuroscience(電子版)の研究によると、ダウン症候群(DS)のモデルマウスで、発症にかかわる数百の遺伝子のうち2つの発現を正常化すると、病気の影響の一部を抑えるのに役立つかもしれない。

動物は一般に、遺伝子を両親から1組ずつ受け継ぐので2コピーもっている(性染色体は例外)。DS患者には1つ余分の21番染色体があり、重度の学習障害や認知障害の原因となっている。いくつかのDSモデルマウスを利用してDSの行動欠陥、神経発達欠陥の一部を再現できるものの、DSの直接の原因となる遺伝子あるいは遺伝子群の発見には至っていない。

T HaydarらはDSモデルマウスにおいて発症にかかわる遺伝子のうち2つ、Olig1とOlig2の発現低下により、DSマウスの脳活動の不均衡が是正されることを示している。Olig1とOlig2は胚発生に必須であり、神経細胞の一種で脳内の阻害レベルを調節する多くの介在ニューロンを制御する遺伝子である。DS患者では興奮と抑制の不均衡が報告されており、これらの結果は有望だが、Olig1とOlig2の遺伝子量の変化がDSモデルマウスにみられる行動障害を補正するのに有効かどうかははっきりしていない。DSに関連した行動欠陥がOlig1、Olig2量の減少で正常化するかどうかもまだわからない。

この結果を認知障害に直接結びつけたり、ヒトDSの病態にまであてはめたりして推定するのは難しいが、DSの初期進行を標的にした有効な治療法を同定するのに役立つ発見かもしれない。

doi: 10.1038/nn.2600

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度