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発作を起こした心臓の瘢痕を少なくする

Nature Cell Biology

2008年12月15日

Less scarring for broken hearts

Nature Cell Biology

心臓発作の後に瘢痕組織が過剰に形成されないように調節する過程が明らかになった。この過程を防止すれば、損傷後の心臓機能の回復を促進できると考えられる。

一般には心臓発作と呼ばれている心筋梗塞は、世界で死亡原因の13%を占め、先進国では主要な死亡原因の1つとなっている。sFRP2というタンパク質は、カエルや魚類の胚発生に重要な役割をもつ酵素の活性を負に調節しているが、T Satoたちはこのタンパク質をコードしている遺伝子について調べ、マウスでは、コラーゲン前駆体の切断にかかわる同じ酵素の活性をsFRP2が増強していることを見いだした。コラーゲンは、瘢痕組織に沈着する主要成分である。瘢痕組織が形成される際のコラーゲン生成は、この前駆体タンパク質の分解に依存しており、過剰な瘢痕形成は心臓機能の回復を妨げることが知られている。したがって、sFRP2は瘢痕組織でのコラーゲン沈着を促進し、心臓の回復を妨げているのである。

Satoたちは、Sfrp2遺伝子をもたないマウスでは、心臓中の血液の流れを制限するような処理をして損傷を与えた後の瘢痕組織が、正常なマウスに比べて少ないことを示している。このようなマウスは心機能の回復も改善された。このことは、sFRP2の阻害が過剰な瘢痕形成を制御し、心筋梗塞後の心臓機能を改善する有効な方法になる可能性を示唆している。

doi: 10.1038/ncb1811

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