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うつ病にかかわる新しい因子

Nature Medicine

2010年10月18日

New factor involved in depression

Nature Medicine

MKP-1とよばれる酵素がうつ病に関係しており、これが新しい治療標的になる可能性が明らかになった。

うつ病は、患者数の多さと経済的損失の大きさのため、最も社会に深刻な影響をもたらす神経生物学的疾患の1つとなっている。それにもかかわらず、うつ病の病態生理の原因となる細胞機構、分子機構については、完全に解明はされていない。R Dumanたちは、ゲノミクス技術を用いてうつ病患者の脳組織を調べ、MKP-1の発現が亢進していることを発見した。MKP-1はタンパク質からリン酸基を取り除く酵素の仲間で、ニューロンの機能にかかわる重要な情報伝達経路であるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)カスケードの、主要な負の調節因子の1つである。

Dumanたちは、ラットとマウスでMKP-1の役割を調べ、MKP-1の発現レベルの上昇が抑うつ行動を引き起こすことを発見した。逆に、抗うつ剤を投与するとMKP-1の発現や行動は正常に戻った。またMKP-1が欠失したマウスは、ストレスが引き起こすうつ症状からの回復が早い。これらの知見は、このMKP-1がうつ病の病態生理にかかわっている可能性があることを明確に示している。

doi: 10.1038/nm.2219

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