注目の論文
【遺伝】節足動物の進化を解明する手がかりとなる「生きた化石」
Nature Communications
2013年10月16日
Genetics: ‘Living fossil’ provides insight into arthropod evolution
東アジアに数多く生息するサソリの一種であるキョクトウサソリ(Mesobuthus martensii)のゲノムの概要塩基配列を報告する論文が、今週掲載される。このゲノムには、キョクトウサソリの獲物、夜間行動、採餌と解毒に関する遺伝的特性がはっきりと示されており、節足動物の適応と進化の研究にとっての貴重な情報資源となっている。
サソリ類は、「生きた化石」として知られ、古代の節足動物の祖先の主要な解剖学的特徴が維持されているため、独特なタイプの節足動物とされる。したがって、サソリ類は、節足動物の進化を研究するうえで重要なモデルとなっている。今回、Wenxin Liたちは、サソリのゲノムの塩基配列を初めて解読し、その長期存続に寄与している可能性のある遺伝子を探索した。
その結果、タンパク質をコードする遺伝子(32,016個)が同定され、非常に重要な生存機構(毒液の産生、光に応答する能力、獲物が分泌する有害な毒素の消化など)の調節に関与する遺伝子の進化を示す証拠が得られた。この結果からは、サソリが、昆虫ほど多くの生理状態の変化と形態変化を経ていないが、サソリの遺伝的全体像の多様性が昆虫よりはるかに高いことが示唆されている。今回の研究結果は、サソリ類の進化が昆虫より控え目だとする一般的な考え方に異議を唱えるものである可能性があり、節足動物の独特な適応モデルを示している。
doi: 10.1038/ncomms3602
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