注目の論文
【遺伝】真菌のゲノムから明確になったイネの感染症の遺伝的基盤
Nature Communications
2014年5月21日
Genetics: Fungal genome highlights genetic basis of rice infection
イネの病気である稲こうじ病を引き起こす稲こうじ病菌(Ustilaginoidea virens (Cooke) Takah)という真菌の概要塩基配列について報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、この真菌の病原性において何らかの役割を果たす可能性のある遺伝子が同定され、この真菌の感染機構に関する手掛かりも得られた。この感染機構は、病害防除法の標的となる可能性がある。
稲こうじ病は、稲こうじ病菌を原因とする穀物の病気の一種で、世界の稲作地域の大半(中国の稲作地帯の約3分の1を含む)が被害を受けており、全世界で深刻な経済的損失をもたらしてきた。今回、Wenxian Sunたちは、稲こうじ病の解明を進めるため、稲こうじ病菌の概要塩基配列の解読を行い、さらに、4つの稲こうじ病菌株の低カバー率塩基配列解読を行い、他の11の真菌種との比較解析を行った。
Sunたちは、稲こうじ病菌がイネの雄しべの花糸を通して栄養素を吸収し、それによってイネは不利益を受けるが、枯死しないことを示す遺伝子を同定し、それに加えて、毒素の産生を引き起こすいくつかの遺伝子も同定した。この毒素の産生は、稲こうじ病菌の病原性の一因となっている可能性が高い。
以上の新知見は、稲こうじ病菌の進化と宿主適応、そして、病原性真菌一般に関する手掛かりとなっており、有効な防除法の基盤となる可能性もある。
doi: 10.1038/ncomms4849
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