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【動物学】海面近くで温まってから深海に潜るタイワンイトマキエイ

Nature Communications

2014年7月2日

Zoology: Chilean devil rays warm up in the sun before diving to extreme ocean depths

Nature Communications

もっぱら海面付近に生息することが知られているタイワンイトマキエイが、しょっちゅう深海に潜っていることが明らかになった。この新知見を報告する論文が、今週掲載される。

ホホジロザメなど、深海へ潜水する数種類の最上位捕食者は、脳の温度を周囲の水温よりも高く維持することが知られている。かなり前から唱えられている学説によれば、脳の温度を高くすることで脳の活動と視力がもたらされ、低温の深海での採餌において著しい選択的優位性が得られる。一部のエイの場合には、奇網という特殊化した器官が、熱交換を通じて、脳の温度を引き上げていると考えられているが、主に水温の高い浅瀬に生息すると考えられているエイにおいて奇網が果たす役割は解明されていない。

今回、Simon Thorroldたちは、衛星追跡用の発信器を用いた調査を数か月間実施して、アフリカ北西沖に生息する15匹のタイワンイトマキエイの動きを調べ、論文にまとめた。この調査では、水温が最大摂氏3℃低下する水深最大2キロメートルまでの潜水を頻繁に行っていることが明らかになった。2 kmという潜水深度は、海洋動物の中で最も深い。

記録されたタイワンイトマキエイの潜水プロファイルからは、バイオマスが豊富に存在する水深での採餌行動が示唆されている。このエイは、深海への潜水の前後の日中の時間帯に海面付近で相当な時間を過ごす傾向があり、体を温めているのだと考えられる。

このタイワンイトマキエイの潜水行動の観察結果は、このエイに備わっている精巧な熱交換系の存在を説明するだけでなく、表層水と深海の重要な生態的結びつきを示している。最近、タイワンイトマキエイが属する分類群が絶滅危惧種に登録されたため、その行動の解明が、今後の保全活動に非常に重要な意味を持つ可能性がある。

doi: 10.1038/ncomms5274

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