注目の論文
血液幹細胞の維持に不可欠な因子
Nature Immunology
2008年5月26日
A critical factor for maintaining blood stem cells
ヒトの白血病やユーイング肉腫(若年成人にみられる悪性の骨腫瘍の一種)に発現の変化が関連していることが知られているある遺伝子が、血液幹細胞の適切な機能にも必要であることがわかった。このErgとよばれる遺伝子が、血液幹細胞を正常な数に保っているという。血液幹細胞は、血液中へ寿命の短い成熟細胞を絶え間なく供給する働きをしている。
B Kileたちは、マウスで遺伝子スクリーニングを行い、Erg遺伝子の変異が幹細胞数に影響することを明らかにした。未発達血液細胞集団の種類に応じて成熟血液細胞形成能力を見積もることにより、Ergに変異のあるマウスでは、血液幹細胞の生産または生存率が低下していると判断された。つまり、Ergの変異の中には、血液幹細胞数を減少させるものと、ヒトの白血病に関与するものがあるのである。
今回の知見によって、Ergがヒトのがんに対する作用とは別に重要な機能をもつことが明らかになり、またマウスモデルと遺伝子スクリーニングが、ヒトのがんなどの病気にかかわる特定の遺伝子の影響を知るための重要な方法であることが示された。
doi: 10.1038/ni.1617
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