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薬剤耐性チフス菌を世界規模で解析する

Nature Genetics

2015年5月12日

Worldwide analysis of drug-resistant typhoid

Nature Genetics

腸チフスの主たる原因であるチフス菌(Salmonella Typhi)の抗生剤耐性株が過去30年以内に出現し、今もアフリカで流行し続けていることがゲノム解析によって初めて明らかになったことを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。

腸チフスには、全世界で毎年2000~3000万人が罹患しており、吐き気、高熱、腹痛といった症状がある。チフス菌感染者の中には無症状の者もいるが、病気をうつすことはできる。腸チフスの多くの症例では、ワクチン接種と抗生剤が有効な治療法となっているが、抗生剤に耐性を示すチフス菌株が1970年代以降に登場している。

今回、Vanessa Wongたちは、1992~2013年に63カ国で採取されたチフス菌のサンプル(合計1,832点)のゲノム塩基配列を解読した。その結果、全体の47%が複数の抗生剤に耐性のある菌株H58であることが判明した。今回の研究で明らかになった抗生剤耐性の地理的パターンには、63か国での抗生剤の使用が反映されている。Wongたちは、H58が25~30年前に南アジアで出現し、東南アジア、西アジア、アフリカ東部・南部、フィジー島に広がったことを明らかにし、最近、アフリカの複数の国々でこれまでに報告されたことのないH58の伝播の波があったことを示す証拠も発見した。これは、抗生剤耐性菌株の流行が今も続いていることを示している可能性がある。

doi: 10.1038/ng.3281

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