Nature ハイライト

Cover Story:腫瘍プロモーション:大気汚染が非喫煙者の肺がんを促進する

Nature 616, 7955

1947年にIsaac Berenblumは、がんの発生は2段階過程であると提案した。第1段階で、健康な細胞に変異が導入され、第2段階で、組織の炎症を通して腫瘍の増殖が促進される。今回C Swantonたちは、微小粒子状物質が非小細胞肺がんの発生促進において果たす役割を調べ、汚染に応答したがんのイニシエーションがBerenblumのモデルと一致することを見いだしている。彼らは、PM2.5と呼ばれる、粒径が2.5 μm以下で煙や自動車排ガスによく見られる極めて微細な粒子を調べた。そして、4カ国の3万3000人近い人々のデータを検討し、PM2.5の長期曝露と、喫煙未経験者に見られる肺がんの発生の間に明確な関連を見いだした。著者たちは、マウスを用いたさらなる研究において、PM2.5が、肺がん細胞で免疫細胞の流入とシグナル伝達分子インターロイキン1βの放出をもたらしていることを見いだした。これは、特定のがんのドライバー変異を持つ正常組織の細胞で、炎症を悪化させて腫瘍のプログレッションを駆動する。総合すると今回の結果は、PM2.5が、腫瘍プロモーターとして働き、正常組織に存在する既存のがんの変異を悪化させる可能性があることを示唆している。

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