Nature ハイライト
Cover Story:耐え難い熱:気温の上昇で熱帯林は光合成の機能不全に近づいている
Nature 621, 7977
表紙は、オーストラリアの熱帯林における葉の温度の熱画像である。今回C. Doughtyたちは、熱帯の林冠の葉のごく一部が、46.7°Cという、光合成が機能しなくなり始める臨界温度に近づいている可能性があることを明らかにしている。彼らは、アマゾン、コンゴ盆地、東南アジアの上空で国際宇宙ステーションからの観測によって得られた高分解能熱測定結果を用いて、林冠の最高温度を推定した。その結果、乾燥期の林冠の平均温度は約34°Cであるが、一部は40°Cを超え得ることが見いだされた。重要なのは、林冠上部の葉は0.01%の割合で臨界温度を超えており、林冠上部の温度を人為的に上昇させた実験では、この割合が1.3%まで増大したことである。著者たちは、地上での観測データや実験データと組み合わせて、温暖化が3.9°Cを超えれば、大規模な葉の枯死と損失が起こり始める可能性があると見積もっている。今のところ、気候変動予測の最悪のシナリオでは、推定される気温上昇は4°Cと示唆されている。
2023年9月7日号の Nature ハイライト
天文学:z > 6のクエーサー母銀河からの星の光の検出
天体物理学:原始惑星系円盤内に見つかったCH3+
物性物理学:量子ドットの柵に囲まれた系の超電導状態
流体力学:心周期から着想を得た乱流抑制法
エネルギー材料:リチウム–硫黄電池の表面反応を可視化する
ナノテクノロジー:吸着分子の一方向移動
化学:有機分子触媒に基づく振動系
環境科学:全球の原野と都市の境界域のマップ
地球化学:チタン同位体に記録された地球力学的状態
生態学:地球温暖化で沈みゆく沿岸生態系
進化遺伝学:ヒト集団間でウイルス感染応答に違いがある原因
がんゲノミクス:BRCA1/2欠損がんのゲノム再編成の特徴
神経科学:長期増強にはCaMKIIの構造機能が重要
微生物学:pAgo活性化の構造基盤
微生物学:腸の共生細菌を認識するT細胞の特徴
免疫学:T細胞を組織常在性にする代謝適応
腫瘍免疫学:γδ T細胞が認識するがん細胞表面のタンパク質複合体の量を調節する仕組み
細胞生物学:ハダカデバネズミの長寿の秘訣を取り入れる
生物物理学:TRPV3チャネルの五量体化