2013年7月号Volume 10 Number 7

銃と戦う研究者

アメリカでは、毎年3万以上の人々が銃の犠牲となっている。それはたぶん、国民1人当たりの銃の所有数が断トツの世界一であることと関係する。重大な問題は、強力なロビイスト団体である全米ライフル協会(NRA)の圧力で、銃が及ぼす負の問題について研究するための助成金を、連邦政府が支出することがほとんど禁止されてしまっていることだ。しかし、カリフォルニア大学デービス校のウィンテミュート博士は、民間財団からの援助や個人資金まで持ち出して、銃支持派の圧力に屈せず、銃の災厄をあばき続けている。

Editorials

米国では歳出超過が日常化し、財政赤字を大幅な歳出カットで克服しようとしている。しかし、連邦政府予算をどこに使い、またどこを削減するかは、イデオロギーではなく、証拠に基づいて決定すべきである。

Free access

生命科学論文の品質を高めるため、Natureは2013年5月から新しい編集方針を導入する。まず、「研究の方法論」が詳細に記載されるよう改革する。また、データをまとめたり解釈したりする「統計手法」が、明確に表現されるよう改革する。

Top of page ⤴

Research Highlights

Top of page ⤴

News

重要なタンパク質などを残して、脳組織を透明化する技術が開発された。この技術は、神経ネットワークの三次元可視化を可能にし、しかも、ホルマリン中に保存されているヒト組織にも適用できるので、脳内ネットワークの解明に大きく貢献するはずだ。

かつて地表にあった岩石は、マントルの中に沈み込み、長い年月をかけて地球内部を循環した後、再び地表に浮上する。今回、そのことを示す証拠が得られた。

ウマやイヌ、さらにはトラまでもが、治療効果の実証されていない幹細胞療法を受けており、動物用医薬を統括する行政当局が規制措置を取ろうとしている。

中国の遠洋漁船による乱獲が、西アフリカの人々の生活と生態系を脅かしている。しかも中国が国際機関へ報告している漁獲量は、実際の10分の1以下という驚くべき研究が発表された。

Top of page ⤴

News Features

米国には人口とほぼ同数の銃がある。不幸なことに、この事実がもたらす結果について調べる研究者は、非常に少ない。銃の力が信じられている米国の常識に、敢然と立ち向かう1人の救急医がいる。

これまで病態に応じて区切られ分類されていた精神障害が、実は1つのスペクトラム、つまり、さまざまな病態が連なった1本の軸として表せることが、近年の研究によって示唆されている。しかし、精神障害診断の最新の改訂版DSM-5では、その採用は時期尚早として見送られた。

Top of page ⤴

Turning Point

Free access

進むべき道筋をしっかりと見定め、計画的に走り出す。それが高橋政代氏流のやり方だ。眼科医、妻、母親の三役も、そうしてこなしてきた。網膜の再生研究に巡り会ってからは、治療法の開発が目標に。現在、iPS細胞を用いた世界初の臨床研究を申請中だ。

Top of page ⤴

Japanese Author

人の心をfMRI画像から読み解くという画期的な技術を開発し、世界を驚かせてきた計算神経科学者、神谷之康氏。機械学習によるパターン認識というコンピューターの手法を神経科学に持ち込み、脳の解明に挑む。今回、眠っている人の夢の中身をfMRI画像から解読することに成功した。

Top of page ⤴

News & Views

縄文土器が調理に使われていたことを裏付ける最古の証拠が得られた。土器片に脂質が付着していたのだ。今回の発見は、土器の発明という人類史上最大級の技術革新について、新たな視点を提供している。

土星の大気には、その環の姿が投影されていることがわかった。土星大気中のイオンの発光の分布を観測したところ、土星の環のすき間に対応するパターンが見つかったのだ。水の氷でできた環から、電荷を帯びた氷が磁力線に沿って大気上層へと運ばれているためらしい。

Top of page ⤴

News Scan

Top of page ⤴