2014年8月号Volume 11 Number 8

特集:驚異の生命設計図

より精緻にゲノム解析を行えるようになったことで、思いもよらない生物の仕組みが次々と明らかになっている。今号では、馴染みのある生き物たちに関する、驚くべき最新の研究成果を集めた。中でも、勝間進(東京大学)らが突き止めたカイコガ性決定の最上流因子は、タンパク質ではなくRNAであったことや、概要ゲノム配列が明らかになったクシクラゲの神経系は他に類を見ないものと分かったことは興味深く、今後は科学分野のみならず経済・産業にも大きな影響を及ぼすことだろう。

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日本政府と製薬企業、そしてビル&メリンダ・ゲイツ財団によって設立された画期的な共同組織であるグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)。その1周年記念イベントで発信されたキーメッセージは、「Healthy People Create Healthy Economies. ― 健康な人々が健全な経済活動を生み出す」だ。
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Editorial

米国の放射性廃棄物貯蔵施設で起こった放射性物質の流出事故は、安全への過信と安全規制の緩みというあまりにもありふれた状況の存在を浮き彫りにしている。

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News

タコは、触腕が絡まないように考えているわけではない。では、なぜ絡まないのか?今回、切断した触腕を使った実験から、タコの触腕が中枢の脳による制御を受けずに動く仕組みが明らかになった。

ハワイに生息するコオロギの雄が、寄生虫から身を守るために鳴くのをやめた。しかもこの変化は、驚くほど短期間のうちに2つの島の異なる個体群で 同時に並行して起きていた。

幹細胞を用いた心臓病治療の臨床試験についてのこれまでの報告を網羅的に 分析した研究から、この心臓病治療の効果に疑義が浮上している。

ロンドンに生物医学研究の新たな拠点が誕生する。この研究所には物理学者や数学者が大勢雇用される予定で、これは、生物学に物理学の専門知識を積極的に活用する動きが 活発化していることの表れだ。

人体に定着している細菌から作られる医薬品が臨床化に近づいている、という見方が投資家の間で広がっている。製薬大手企業がその可能性に目を付け始めたためだ。

クシクラゲの概要ゲノム配列が発表され、独特の神経系が洗い出された。他の生物とはあまりに異なる神経系が明らかになり、さらに謎が深まっている。

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News Features

史上最大級の恐ろしい疫病の名残が、冷凍のミイラや、手紙に同封されたかさぶたに含まれているかもしれない。この感染症がゾンビのように蘇ったとき、私たちは十分に対処できるのだろうか。

コンピューター科学の分野で生まれたある概念が、基礎物理学においても重要な役割を果たし、時空の新しい理解への道を示す可能性がある。

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Japanese Author

酵素や転写因子などのタンパク質は、三次元結晶を用いたX線構造解析やNMRなどによる解明が進んでいる。一方、膜に埋まったタンパク質は、本来の構造を維持したままの結晶化が困難なことから解析が遅れている。そうした中、名古屋大学の藤吉好則特任教授は、自らの手で極低温電子顕微鏡と呼ばれる特殊な電子顕微鏡を開発し、膜タンパク質研究を牽引し続けている。

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News & Views

原生生物であるヨツヒメゾウリムシは、接合後も子が親の接合型を常に維持している。この遺伝の仕組みは、ゲノムに外来DNA塩基配列が入り込まないように、RNA誘導型のDNA削除経路が働いてゲノムを守っている結果であることが明らかになった。

血液脳関門では、脳への脂質の輸送と、トランスサイトーシスによる分子の輸送が行われているが、この2つの過程がどちらもMfsd2aという1つのタンパク質によって調節されていることが明らかになった。

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News Scan

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