2015年1月号Volume 12 Number 1
被引用回数の多い科学論文トップ100
科学文献における「引用」を追跡する初の系統的な試みとして考え出された科学引用索引(SCI)が50年の節目を迎える今年、Nature誌はトムソン・ロイター社とグーグル社に協力を仰ぎ、1900年から今日までに発表された科学論文を被引用回数順に並べた「被引用回数トップ100」リストを作成した。驚いたことにこのリストには、アインシュタインの特殊相対性理論は見当たらず、教科書級の大発見は少ない。科学の発展を支えてきた知見とは、一体どのようなものだろうか。
Editorial
News
植物成長ホルモンジベレリンはシダ植物の性決定にも関与する
カニクサというシダ植物の研究から、フェロモン様の物質を利用して集団内の性比を調節するという、一部のシダ植物に特有な性決定機構の詳細が明らかになった。
欧州のイモリを襲う新興感染症
近年、欧州の有尾類個体群に壊滅的な被害を及ぼしている新興感染症の原因が、アジア固有の真菌であることが明らかになった。ペットの大規模な輸出入により、世界的な流行が懸念される。
がん細胞の排出物が正常細胞をがん化させる!?
腫瘍細胞から放出されたエキソソームと呼ばれる小胞が、正常な細胞をがん化させる可能性があることが分かった。
4万5000年前の現生人類のゲノム配列が明らかに
ホモ・サピエンスのDNAとしてこれまでで最も古いものが得られた。保存状態が非常に良かったため、詳細なゲノム配列解読に成功した。
素早いゲノム解析で赤ちゃんを救え!
不可解な病気を持って生まれた赤ちゃんに迅速な診断と治療を行うために、スピーディーなゲノム解析を行うプロジェクトが米国で始まった。
重力定数の危機にライバルが結集
危機にある重力定数の「真の値」を見いだす実験を計画するため、計量学者たちが会合を重ねている。
幹細胞から成熟β細胞の作製に成功
インスリンを産生する成熟β細胞を、in vitroで幹細胞から大量に作製する方法が開発された。現在の課題は、1型糖尿病患者に移植した成熟β細胞を、患者の免疫系による攻撃から守ることである。
脳機能解明へ、日本でプロジェクト始動
霊長類の高次脳機能解明を目指すBrain/MINDS計画では、マーモセットを使ってヒトの神経・精神障害の研究が行われる。
ヒト疾患の巨大遺伝子バンクを作って病因を探る
形質と遺伝子多様体との関連を明らかにするため、別々の大規模プロジェクトで収集されたDNA配列データを共有し、まとめて解析できるようにする動きが始まっている。
News Feature
被引用回数の多い科学論文トップ100
1900年から今日までに発表された科学論文の中で「被引用回数トップ100」に入っているのは、どのような論文なのだろうか?
Japanese Author
誰もが“バイオインフォマティシャン”の時代
インターネット上の情報やツールを使った遺伝子検索や配列解析など、生命科学分野では研究者や医療従事者によるビッグデータの活用が重要になってきた。そのときに役立つのが、バイオインフォマティクス(生物情報学)の基礎知識。だが日本では教育が遅れ気味だ。バイオインフォマティクス分野の草分け的存在の4人に、バイオインフォマティシャンの仕事や役割、この分野の展望を語ってもらった。
News & Views
重症エボラウイルス感染症のサルを回復させた治療薬
3種類のモノクローナル抗体を混合した治療薬「ZMapp」で、致死量のエボラウイルスを接種したサルは全て回復した。ZMappは、感染後の治療に用いられたことのある他の薬とは異なり、エボラウイルス感染症が進行した段階にあっても治療効果を発揮した。
繊維芽細胞の可塑性が心臓の修復を助ける
心臓繊維芽細胞は損傷を受けた心臓構造の修復に重要な役割を果たすことが知られている。さらに今回、心臓の繊維芽細胞には内皮細胞へと転換できる可塑性があり、心臓が損傷を受けた後にp53依存的に転換が誘導されて、傷害血管の修復を助けることが明らかになった。
News Scan
曲げられるスマホに一歩前進
表示画面をしなやかに
宇宙線をつかまえろ
新型観測装置の準備が進む