2015年5月号Volume 12 Number 5

天文光学で生体イメージング

星の光は大気を進む間に撹乱されるため、地上で撮影するとぼやけてしまう。だが、すばる望遠鏡は、地上にありながら高解像度画像を撮影できる。これは、光がどのように撹乱されたかを瞬時に計算する「補償光学」システムのおかげである。光が撹乱される前の姿を復元できるこの技術を使って、不透明な壁にぶつかって散乱された可視光を壁の向こう側で収束させる、つまり、光を壁抜けさせる手法が、2008年に2つのチームから報告された。以来、補償光学を取り入れて可視光による非侵襲的な生体イメージングを実現しようという研究が活発に行われている。

Editorial

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Research Highlights

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News

食品に広く添加されている乳化剤の中には、大腸の細菌構成を変化させ、その結果、炎症性の大腸炎を引き起こすものがあることが、マウスでの実験で示された。特筆すべきは、米国では「安全」と見なされ、試験が免除されている化合物であっても、同様の作用が観察されたことだ。

人類の出現時期を50万年さかのぼらせるエチオピアの新たな化石と、ホモ・ハビリスの基準標本の再復元で得られた3次元モデルから、人類の誕生とその進化の過程は予想以上に込み入っていたことが示された。

海洋生物の正式な学名や分類学的情報を網羅すべく、過去の全記載情報を洗い直している国際プロジェクト「WoRMS」のデータベースがほぼ完成。22万を超す生物種が「有効」であると確認された一方で、19万400種が重複を理由にリストから削除された。

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「重力波検出」という2014年3月の衝撃的な発表は、衛星観測データを踏まえた分析により白紙に戻った。しかし、宇宙の始まりに生じたさざ波の探索競争は一層激しさを増している。

「ケイ素版グラフェン」とも呼ばれる新材料「シリセン」を使った 電子デバイスが作製された。これを機に、二次元材料分野の研究がさらに加速するかもしれない。

英国の大学に助成金を配分する英国高等教育財政審議会は、新評価制度の一環として英国の各大学に「研究がインパクトを与えた事例」を示した報告書を提出させた。Natureは、約7000件に上るそれらの事例について独自に言語解析を行い、報告書で使用された単語と審査員による評価結果との相関関係を調べた。

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News Features

天文学の補償光学技術をヒントに、不透明な物質を透視する手法が最近開発された。非侵襲的でより高分解能な生体イメージングを実現しようと、研究が熱を帯びている。

一般社会では、性別が二元的に男か女かに分けられている。だが、生物学的な研究が進んだことで、性別は単純に二元化できるものではないことが分かってきた。

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Japanese Author

「心臓はなぜ体の左側にあるのか」といった左右非対称性の研究で、その分野を開拓しリードしてきた発生生物学者・濱田博司氏。2015年4月、理化学研究所 多細胞システム形成研究センターの新センター長に就任した。左右非対称性の仕組み解明を目指す研究者としての取り組みと、新センター長としての抱負について伺った。

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News & Views

コンピューターゲームのプレイ方法を、深層学習と強化学習によって自ら学習する人工知能が開発された。この人工知能は、古典的な49種類のコンピューターゲームのうち29種類でプロのゲーマーと同等以上の成績を収め、人工知能がさまざまなタスクに適応可能なことを実証した。

細胞小器官の位置は細胞機能に影響を及ぼすと考えられているが、それを正確に調べる術がなかった。このたび、光遺伝学の手法を使って、細胞小器官の位置や運動性を自在に操り、細胞内構造を狙ったとおりに再編成できる技術が開発された。

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News Scan

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