2015年6月号Volume 12 Number 6

エンセラダスに生命の萌芽を見出す

太陽系の探査活動から、驚くべき報告が相次いでいる。中でも、土星の小さな衛星エンセラダスは2005年にカッシーニ探査機が撮影した画像から注目が集まり、最近では、この天体に熱を維持できる機構があることや水が存在することが報告されていた。さらに今回、東京大学の関根康人氏らは、原始的な生物であれば生育可能な環境があることを実験室での再現実験で証明し、Nature 2015年3月12日号に報告した。

Editorial

今後数年間のNASAのミッションでは、土星および木星の奥深くに分け入って探査が行われる。再決定された土星の自転周期が正しいかどうかも、この探査から明らかになるだろう。

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Research Highlights

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News

化石からタンパク質を回収してアミノ酸配列を解読することで、DNAの回収が困難な古い年代の化石であっても解析できることが実証された。この手法は、理論的には数千万〜数百万年前の化石にも適用できることから、生物の系統分類学に革命をもたらすかもしれない。

103番元素ローレンシウムの第一イオン化エネルギーの測定に初めて成功した。周期表上のローレンシウムの位置と周期表自体の構造をめぐる議論が再燃するかもしれない。

竜脚類ディプロドクス科の系統樹を見直した研究から、アパトサウルスと同種とされたジュラ紀の巨大草食恐竜ブロントサウルスに独立種であることを示す特徴が見いだされたという。

20世紀中の商業捕鯨頭数が初めて算定され、290万頭に上ることが分かった。総生物体量で見ると、人類史上最大の動物捕獲・駆除と考えられる。

糖尿病の長期的合併症の研究用に、大型動物のバイオバンクが設立された。入念に作製された多種多様な組織試料は、無料で利用できる。

2015年は準惑星の年だ。NASAのドーンとニューホライズンズという2機の探査機が、太陽系で最大級の2つの岩石質小天体に初めて接近し、科学者にその姿を見せてくれるのだ。

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News Feature

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Comment

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Japanese Author

ガリレオやカッシーニ、火星ローバーなどによる惑星探査が進み、地球と似た環境がかつて存在した火星、液体の現存する木星の衛星エウロパ、土星のタイタンなどで、生命存在の可能性が議論されてきた。一方で、見向きもされなかった土星の小さな衛星エンセラダスが、にわかに注目を集めている。原始的な微生物であれば、生息可能であることが分かってきたからだ。東京大学大学院理学系研究科の関根康人准教授は、国際的な研究チームの一員として実験室での再現実験を担当し、微生物を育める環境の存在を実証することに成功した。

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News & Views

膜に細い穴(細孔)を設けてその中に液体を満たし、この穴を圧力の制御によって可逆的に開閉させ、ある圧力で特定の流体だけを通過させるようにすることができた。こうした液体充填型のゲート機構を使えば、混じり合わない流体の混合物を、調節可能な形で分離できる。

抗腫瘍免疫応答を誘導する樹状細胞ワクチンは、がん患者の治療にはあまり有効ではなかったが、今回、ワクチン接種部位を前処置して炎症を誘発しておくと、このワクチンの効果が増強される可能性があることが分かった。

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News Scan

植物は温度の記憶に基づいて最適時期に発芽する種子を作っている

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