2015年9月号Volume 12 Number 9

微生物ダークマターを探る最新手法

地球に存在する微生物の99%は培養ができないことから、「微生物ダークマター」と呼ばれ、そこには抗生物質などのお宝が大量に眠っていると考えられている。近年、研究者たちは微生物ダークマターに迫ろうと、未培養のまま遺伝子を詳細に解析する技術や、微量の試料から目的の微生物を探す技術などを編み出してきた。中でも、微生物をその生育環境で培養する新技術では、実際に新しいタイプの抗生物質が見つかった。これらの最新手法を詳しく紹介する。

Editorial

エボラ出血熱の流行を受けて、感染症の大流行という国際的な緊急事態への対応について改善計画が話し合われてきた。この提案は実行されるべきだが、地域レベルでの解決が最善の防御であることを忘れてはならない。

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News

2015年7月14日、NASAの探査機ニューホライズンズが 冥王星のフライバイに成功した。次々に届く観測画像に映し出される、冥王星とその最大の衛星カロンの予想外の姿は、科学者たちを魅了するとともに、我々に多くの興味深い謎を投げかけている。

太陽光がわずかにしか届かない中深度の海で、黄色や橙色、赤色に輝く蛍光サンゴが発見された。これらのサンゴは自ら光ることで、共生藻類に足りない光を補充しているのかもしれない。

ハワイのマウナケア火山は、先住民にとっては神聖な山であり、科学者にとっては天文台を設置するのに理想的な場所である。異文化間の対立により、この山の利用法をめぐるルールが変わろうとしている。

宇宙が誕生して最初に生まれた世代の星たちを初めて発見したと、天文学者たちの研究チームが報告した。

多数のニューロンの活動を一度に記録できる、超小型で生体適合性を有するメッシュ状の電子デバイスが開発された。この装置により哺乳類の脳機能解明が進む可能性がある。

古代人ゲノムの集団スケールでの分析が可能になったことで、欧州の言語や文化、技術のルーツと、それらが欧州からアジア全域にかけてどのように広まったかについて、重要な手掛かりが得られた。

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News Features

既知の微生物種は全微生物種の約1割でしかないと言われる。新規抗生物質を求める微生物学者たちは、この広大な未知微生物の世界を探索する新しい方法を何通りも見つけ出している。

近年、米国国防総省(通称ペンタゴン)が、生物学研究を強力に支援し始めた。だが、一部の科学者は、ハイリスクな研究に軍隊式マネジメントで取り組んでうまくいくのかと、疑問視している。

オキシトシンが脳に与える影響は複雑なものであることが、この数年で明らかになってきた。その結果、この物質を単なる「抱擁ホルモン」とする見方を一刻も早く改めるべきだという考え方が研究者の間で広がりつつある。

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Japanese Author

2015年、自然科学の分野で実績を残してきた女性科学者に与えられる猿橋賞を受賞した鳥居啓子名古屋大学客員教授。米国ワシントン大学教授であり、米国で最も革新的な15人の植物学者の1人として、ハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)正研究員にも選ばれる。植物の気孔が形成される仕組みを解明し、シグナル伝達による植物の発生の制御へと、研究フィールドを広げ続けている。

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News & Views

酸素欠乏状態にある乳がん細胞から分泌される酵素リシルオキシダーゼ(LOX)は骨損傷を誘導する。骨損傷は転移に先立って起こり、乳がん細胞の骨への転移を促進していることが分かった。

細胞分裂が終わると、崩壊していた核膜が融合して細胞の染色体を包み込み、核を形成する。この過程をESCRT-IIIタンパク質複合体が調節していることが明らかになった。

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News Scan

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