2015年8月号Volume 12 Number 8

モルヒネ合成酵母の完成が間近

モルヒネは強力な医療用麻薬で、がん性疼痛の緩和でこれに勝るものはないとも称される。需要が高まり続けているが、アヘンケシから抽出して生産するしかなく、製造も管理も依然として高コストである。このたび、モルヒネの前駆物質を生合成できる酵母株が作り出された。安く大量に鎮痛剤を供給できるだけでなく、中毒性のないモルヒネの開発が進む可能性もあり期待が集まっているが、違法なヘロイン生産という大問題を生むことになった。早急な規制が必要だが、このような正反対の面を持つ「デュアルユース」技術から最大限恩恵を受けつつ、その悪用を防ぐのは、簡単なことではない。

Editorial

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News

パプアニューギニアのある民族には、遺伝子変異による未知の機構のおかげで、過去に流行した致死的な脳疾患にかからずに済んだ人々がいる。

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日本の防衛省が、大学や研究機関などの基礎研究に対する研究資金制度を初めて設けた。これは、戦後長く平和主義を貫いてきた日本の研究者社会と軍(防衛省・自衛隊)との関係が変化しつつあることを示すものだ。

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News Features

高齢の科学者の多くは、次の世代のために場所を空ける必要があることは承知しているものの、定年制度は年齢による差別だと感じている。一方、定年制度が廃止された国のデータからは、意外な構造が浮かび上がってきている。

抗体は生物学の実験ツールとしてよく使われているが、市販抗体の説明書きと実際の性能の違いは深刻で、多くの誤った知見をもたらす元凶にもなっている。この現状を改革しようとする動きはあるものの、現状では、研究者1人1人が抗体の性能を確認することで対処するしかない。

長年SFに欠かすことのできない小道具だったレーザー兵器が、ついに現実の戦場に近づいてきた。それを可能にしたのは光ファイバーだ。

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Japanese Author

プロの世界では、一瞬の気の迷いが命取りになることが少なくない。求められるのは、どのような状況下でも、瞬時に正しい決断を行う人並み外れた能力だ。理化学研究所 脳科学総合研究センター 認知機能表現研究チームの田中啓治チームリーダーらは、訓練を重ねたプロ棋士が直観的に「次の手」を決めたり、「攻めるか守るかの戦略」を決めるときの神経基盤の解明を進めてきた。10年にわたる脳活動の測定により、これまでに知られていなかった回路を突き止めることに成功した。

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News & Views

真核生物はいかにして核を獲得したのか? このたび真核生物に最も近縁な原核生物が発見されたことで、真核生物の起源に関する謎の解明につながると期待される。

多能性細胞は体内のあらゆる種類の細胞を作り出すことができる。このような多能性状態は、Wntシグナル伝達の阻害などの「合図」によって獲得され、多様な細胞を作り出すためのバランスを維持した状態であることが分かった。

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News Scan

病原体を輸血血液から取り除く新技術を米国の血液バンクがこの夏に導入する

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