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2018年10月号Volume 15 Number 10
「ヒト胚の育成」入門編
ヒト初期発生は、動物や希少な組織試料を参考に推し量るしかない状況が数十年と続いていたが、ヒト受精卵を研究室で13日を超えて培養できる手法が開発され、この研究に道が開かれた。神経系の発生が開始する14日以降の培養は倫理的な理由で認められていないが、ヒト胚を使わないで初期発生を観察する手法も報告され、議論が始まっている。
Editorial
News
出芽酵母の16本の染色体をつなげて1本に
中国と米国の研究チームがそれぞれ、16本ある酵母の染色体を再編成して、1本ないし2本まで融合することに成功した。意外なことに、こうした酵母の見た目や増殖には異常が見られなかった。
カメ類の起源と初期進化に新たな手掛かり
約2億2800万年前の新種のカメ類化石が発見された。頭蓋や肋骨の形状などからはカメ類進化についての重要な手掛かりが得られたが、現生種に似たくちばしの存在は爬虫類進化におけるカメ類の位置に関する謎をさらに深めるものとなった。
高エネルギーニュートリノの発生源を特定
宇宙から飛来した高エネルギーのニュートリノが南極大陸の観測施設で検出され、遠い発生源が初めて特定された。宇宙線がどこで生まれるのかという謎の解明に近づいた。
木星に新たに10の衛星発見
今回発見された衛星の1つは、近くの軌道を公転する別の衛星と衝突する進路にある。
太陽のコロナに飛び込む探査機
NASAの「パーカー・ソーラー・プローブ」は、太陽に最も接近する探査機になる。
中国の大規模出生コホート研究から多くの成果
研究開始からまだ日は浅いが、公衆衛生に関して早くも重大な知見をもたらしていて、マイクロバイオーム研究も進められている。
大麻由来の抗てんかん薬が米国で承認
米国食品医薬品局が大麻由来の薬剤を初めて認可した。これを口火に、大麻成分の研究に対する法的規制の緩和が期待されている。
TOOLBOX: ウェブ上の論文にメモを残せるツール
複数の科学出版社が非営利組織Hypothes.isと提携して、科学者がウェブ上の研究論文にコメントを残せるシステムを構築しようとしている。
News Feature
「ヒト胚の育成」入門編
技術の進歩により、ヒト胚発生の最初の段階について解明が大きく進み始めており、倫理的に越えてはいけない一線に迫りつつある。
Japanese Author
最遠方銀河からのメッセージ
宇宙からはさまざまな電磁波がやってくる。生まれたての星から、寿命を終えた星の残骸から、そして宇宙創生期の天体から。天文学者たちは、こうした電磁波のメッセージを解読し、宇宙の成り立ちを解き明かす。このほど、MACS1149-JD1という銀河が132.8億光年離れた最遠方の銀河であることを、大阪産業大学の井上昭雄准教授と橋本拓也研究員を中心とする研究チームが同定し、Nature 5月17日号に発表した。さらに、この銀河では、ビッグバンから2.5億年後にはすでに星が形成されていたことも突き止めた。
News & Views
アクチンタンパク質は核内でゲノムを守る
重合したアクチンは、モータータンパク質と共に核内のDNA損傷部位に集合して、DNAの可動性と修復を助けていることが明らかになった。この知見は、ゲノム完全性の保持を支える調節機構に新たな階層があることを示している。
古いヒト族のアジア到達を示す石器
約210万年前の石器が中国で発掘された。この証拠により、アフリカ外のヒト族種のものであることが確認されている最古の痕跡の年代が、さらにさかのぼることになった。
マヨラナ粒子の証拠を観測
マヨラナフェルミオンと呼ばれるエキゾチックな粒子は、量子計算に応用できる可能性があるが、その存在はまだ決定的な形で確かめられていない。今回、2つの研究グループが、マヨラナフェルミオンと考えられる実験結果を得た。
News Scan
デスマスクが助けた化石化
最古の軟体組織生物が腐らずに化石になった理由。
正直なうそつき
トランプの虚言は見かけの信頼性を高めているらしい。