2019年4月号Volume 16 Number 4
周期表の発展を支えた女性科学者たちの物語
2019年は、メンデレーエフが元素の周期律を提案して150周年に当たる。だが、周期表は1人の科学者が作ったものではない。同時期に同様の概念を提案した科学者は他にもいたのに、なぜメンデレーエフの提案が支持されるようになったのか。それに、周期表を形作る上で重要な役割を果たした女性科学者たちの功績はあまり知られていない。彼らの足跡をたどることで、周期表の発見と発展の全体像が見えてくる。
Editorial
News
免疫療法に反応しやすい腫瘍を見分ける方法
免疫療法を受けた患者の全生存期間の延長と、腫瘍変異量の高さに関連が見いだされた。だが、臨床でそれを調べるには課題が多い。
再プログラム化したヒト膵α・γ細胞でインスリン産生
通常はインスリンを産生しない膵細胞を、インスリン産生細胞に改変できることが報告された。さらに、この細胞を移植した糖尿病マウスで、糖尿病の回復が確認された。
「ダイエット薬」は蚊にも有効
蚊にヒトのダイエット薬を与えたところ、吸血行動を抑制できた。だが、感染症対策とするには越えねばならない壁がいくつもある。
KAGRAが開く重力波天文学の新時代
岐阜県の神岡鉱山の地下に建設された重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)は、高い感度を達成するために野心的な技術を採用している。その本格稼働が、2019年秋から始まる予定だ。
南極の氷底湖から微小な動物の死骸を発見
南極大陸の厚さ1kmの氷を掘削し、その下に埋もれた氷底湖に到達するという希少なミッションから、驚くべき発見があった。
ニューホライズンズが見た太陽系「最遠の天体」
NASAの探査機ニューホライズンズが、これまでで最も遠いカイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ」の探査を行った。
霊長類の脳の「ソフトウエア」を調べる
単一ニューロンを追跡して霊長類の脳活動を調べる先駆的研究で、ヒトとサルの脳の「ソフトウエア」に違いがあることが分かった。
News Feature
Comment
周期表の発展を支えた女性科学者たちの物語
新元素の発見から既知元素の特性評価まで、周期表を形作る上で重要な役割を果たしてきた女性科学者たちに、化学史学者のBrigitte Van TiggelenとAnnette Lykknesが光を当てる。
News & Views
1つの抗体で全ての型のインフルエンザと闘う
さまざまなインフルエンザウイルス株(ヒトで流行を引き起こすA型・B型を含む)を認識できる改変抗体が作製された。全てのインフルエンザウイルス株に対する「普遍的な」防御の実現に近づいたのだろうか。
父親由来のミトコンドリアがたどる運命
生物学の基本原則の1つに、「細胞内のエネルギー生成を担うミトコンドリアとそのDNAは、母親のみから受け継がれる」というものがある。しかし、時にはミトコンドリアが父親からも受け継がれることを示唆する興味深い研究が報告された。
グリーンランドの氷河下からメタンが放出されている
グリーンランド氷床下の堆積物中で生成するメタンが、夏季の融解水によって大気中に放出されていることが報告された。この結果は、氷河の融解がこの温室効果ガスの重大な全球的ソースとなっている可能性を示唆している。
角を回った向こうを影で見る
障害物のために直接見通せない所(死角)を、直接見えている影の部分にある情報を分析することにより、普通のカメラで「見る」ことができることが実証された。この成果は、ロボット、自動車、医療用のセンサー技術に応用される可能性がある。
News Scan
脳の特定部分に介入
超音波ビームで薬剤放出。
酔っ払いの記憶
飲酒と記憶に関する定説に誤りあり。