2005年10月号Volume 2 Number 10
Editorial
News Features
チンパンジーゲノムの概要配列が完成!
これまでに、一見、ヒトと大きく異なっているように見える生物が、実は驚くほど似ていることが、ゲノム配列情報によって数多く明らかにされてきた。控えめに見積もっても、ヒトとげっ歯類の遺伝子は約88% が共通で、ニワトリの遺伝子とは60% が共通している。「類似性」という言葉をより緩やかに使えば、ホヤの遺伝子の最大80% は、なんらかの形態でヒトの遺伝子にもみられる。そのため、いまだに「私たちがヒトであるのは、何があるからなのか」という疑問に答えられていないのも、もっともなことだといえる。ゲノミクスを使ってこの疑問を探求する際には、着眼点を変えて、ヒトに最も近い現存の動物種であるチンパンジーを調べる必要がある。ヒトとチンパンジーのDNA は98% 以上共通しており、遺伝子 はほとんど共通であることから、ヒトとヒト以外の動物の類似点ではなく、細かな相違点を調べるための出発点として、チンパンジーは最も適している。
霊長類ゲノムから見えるヒトの進化
チンパンジーゲノムの概要配列の完成は大きな第一歩だ。しかし、ヒトの親せきである霊長類のゲノムの解読がさらに進めば、ヒトがどのように進化してきたかなど、もっとたくさんのことが明らかになるとCarina Dennisが報告する。
惑星科学界の敏腕男
2015年、冥王星に初めての探査機が到着する。「ニューホライズン」と名づけられたこの無人探査機計画は、惑星科学者Alan Sternが大切に育ててきたものだ。Amanda Haagが取材した。
News & Views
チンパンジーとわれわれ
チンパンジーゲノム概要配列の発表は、特別に重要なできごとだといえる。このゲノムは、ヒトの生物学的性質や進化を解明するための情報の宝庫となるからだ。
地球で起こったことを月で見る
月の表面は地球初期の歴史の記録を保有しているのだろうか。最近発表された月の表層砂の分析に基づくと、どうやらそうらしいのだが、卓抜な発想によりこの考えを検証することができそうだ。
Business News
伝統の箔製造技術が手中におさめた携帯電話市場
1980 年頃までの技術を基盤とするハイテク企業は、ほとんど存在しない。ましてや、今から305 年前に作りだされた伝統工芸なんて役に立つはずがないと思われていた。ところが、17 世紀末以来順調に事業を展開してきた日本の同族会社が、この8 月に、金属箔粉事業で日本政府から賞を受けた。今日、金属箔の最終用途は、ほとんどが携帯電話なのである。
Japan News Feature
日本は、「ねらいを定めて高精度に」読む戦略
日本はアメリカに先立ち、2004年、チンパンジー22番染色体の完全解読に成功した。日本とアメリカでは、霊長類ゲノム研究の手法や考え方にどのようなちがいがあるのだろうか。
News
森林は期待されるほど二酸化炭素を吸収しない
温室効果ガスによって森林が急成長することはない。
カーボンナノチューブのトランジスタが実現
カーボンナノチューブによって極微の回路が誕生するかもしれない。
プリオン病の血液試験法
新しい検査方法が見つかれば、ヒト脳疾患の隠れた拡大を防ぐことができるだろうか。
チンパンジーゲノムが解読されてわかること
私たちヒトと類人猿とのちがいが遺伝子配列の比較から見えてくる。
はじめて発掘されたチンパンジー化石
50万年前のチンパンジーの歯の化石が、ヒトとチンパンジーに分かれて進化したわけを解き明かす。
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