2024年9月号Volume 21 Number 9
AI革命によるロボットの未来
ロボットは、人工知能(AI)によって 進化するだけでなく、AI の進化を促進する可能性がある。 多くの研究者は、AI に身体的な経験を取り入れて訓練することで、 あらゆるタスクにおいて 人間のような認知能力を持つ「汎用人工知能」(AGI)に 近づけるのではないかと期待している。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「グルココルチコイドを性ホルモンに変える腸内細菌」、「猛暑の都市で涼しく過ごせるスマートテキスタイル」、「AIを利用したデータ検索で抗菌ペプチドを大量に発見」、「レム睡眠はストレス反応を持続させる」、他。
News in Focus
生物医学論文の撤回数が20年で4倍に増えた理由
データの改ざんをはじめとする研究不正が、論文撤回率を上昇させている。
新しい遺伝子を書き込む奇妙な細菌の防御系が見つかった
教科書に記載されている生命の標準的な流れを覆す、細菌の防御系が存在することが明らかになった。
「エビデンスバンク」で科学者の気候変動への取り組みを支援
どの政策が最も効果的であるかについての研究を統合することが気候科学の優先課題だと推進派は話す。
睡眠不足で記憶力が低下する理由
ラットを使った研究で、断続的な睡眠の後には、記憶形成につながる重要な脳内信号が低下することが示された。
研究機関へのサイバー攻撃が多発 その深刻な被害
ハッカーたちは近年、大学や研究機関をランサムウエア攻撃の標的とし始めている。コンピューターがひとたび感染すると、職員も学生も仕事にならなくなってしまう。
大ヒット肥満治療薬の廉価版がインドと中国で作られている
さまざまな減量薬の特許が切れようとしている今、インドと中国の企業がこうした治療薬を幅広く入手できるようにするべく、低価格版の製造にしのぎを削っている。
オゼンピックの快進撃が続く:臨床試験で腎臓病への有益な効果が実証
人気の糖尿病薬オゼンピックは糖尿病患者の腎不全や死亡のリスクを大きく低下させる。
Features
AI革命はロボットをどう変えるか?
人工知能とロボット工学の融合は、両分野を新たな高みに引き上げる可能性がある。
がんの進行を抑える個別化RNAワクチン
短期間で世に送り出されたCOVID-19ワクチンと同じRNAワクチンの技術が、現在、がんの個別化療法に使えると有望視されている。
NASA宇宙飛行士が月南極調査の予行演習
米国航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士たちは2024年5月、米国アリゾナ州の火山地帯で月面踏査の大規模な予行演習を行い、月の南極の厳しい状況下での地質学調査に備えた。Nature通信員がミッションコントロール(運用管制)センターから報告する。
科学者に対するハラスメントが急増 研究機関はどう対応すべきか?
研究者が自身の研究を巡ってさまざまな攻撃に直面することが増える中、研究者をいかに支援し、保護するかについて議論が交わされている。
News & Views
細胞は染色体数の変化にどのように対処するのか
染色体が失われたり、過剰になったりすると、遺伝子発現に大きな変化が生じ、細胞内のタンパク質量の微妙なバランスが崩れる。これに対処するため、染色体数が正常でない酵母は、過剰なタンパク質を分解してバランスを回復していることが明らかになった。
父親の食生活が息子の代謝に影響する
ミトコンドリアのDNAは、父親からは受け継がれない。しかし、父親の食生活やミトコンドリアの質を感知するミトコンドリアRNAは精子から卵に受け渡され、子の代謝に影響を及ぼすことが分かった。
ペプチドと水でできた自己修復ガラス
単純なペプチドが、水と無秩序に相互作用することで、接着剤にもなる透明な自己修復ガラスを形成することが見いだされた。今回の知見は、従来のガラスの持続可能な代替品開発への道筋を示している。
Advances
手書きの効用
実際に手を動かすことが学習にプラスとなる。
ビール酵母のセカンドキャリア
電子機器廃棄物から金属を回収する。
Where I Work
Rodolfo Salas-Gismondi
Rodolfo Salas-Gismondiは、カエタノ・エレディア大学(ペルー・リマ)の古生物学者、ペルー国立自然史博物館(リマ)の脊椎動物古生物学部門長。