2008年12月号Volume 5 Number 12
Editorial
News
哺乳類の4分の1が絶滅の危機にある
哺乳類に関する初めての包括的調査によると、世界の哺乳類種の4分の1が絶滅の危機に瀕しているという。哺乳類の全種のうち半数で個体数が減少しつつあり、なかには激減したものもある。例えば、タスマニアデビル(Sarcophilus harrisii)の数はこの10年で60%も減ってしまった。
銀河団の観測からダークエネルギーに迫る
宇宙の膨脹を加速させる不可解なエネルギーの証拠を探している天文学者たちが、3つの新しい銀河団を発見した。彼らが用いたマイクロ波観測技術は、ダークエネルギー探しに用いられている既存の方法に匹敵するものになる可能性がある。
News Features
共同研究におけるチーム作りのコツ
成功する共同研究チームはどこが違うのだろうか? 巨大なオンラインデータベースとネットワーク分析を使って、共同研究を成功に導くチーム作りのルールを見いだそうとする研究をJohn Whitfield記者が取材した。
中国は遺伝子組み換えイネへの準備ができているか
人口増大に伴う食糧危機を回避するための取り組みの中で、中国は主要農作物「イネ」の遺伝子組み換えを偏重している。Jane Qiuがこの前例のない構想の根拠を探る。
Japanese Author
磁石の磁化方向を電界で直接制御することに世界で初めて成功(大野 英男)
磁石の性質をもつ半導体(強磁性半導体)の磁化の方向を電界によって直接制御することに、東北大学電気通信研究所の大野英男教授らのグループが世界で初めて成功した。外部磁界や電流を使う従来の方法と異なり、電力消費の極めて低い次世代磁気メモリの開発に道を開くもので、成果はNature 2008年9月25日号1に掲載された。大野教授に研究の意義、展望を聞いた。
News & Views
脂身でもなければ肉でもない
哺乳類では、白色脂肪組織が脂肪を蓄積し、褐色脂肪組織が脂肪の燃焼を行う。褐色脂肪細胞と筋細胞の起源が共通であることは、褐色脂肪細胞の特異な機能を説明する助けとなりそうだ。
種分化の仕組みが見えてきた
魚の眼がその視環境に適応することで、雌が配偶相手として選ぶ雄の体色に偏りが生じることがある。感覚器官の特性によるこうした選り好みは、新しい種を作り出す一因となりうる。
Japan News Feature
高度生殖補助医療の安全性を問う
世界初の試験管ベビーは、今年30歳を迎えた。現在、高度生殖補助医療で生まれた子どもたちの数は、世界で累計400万人にものぼる。しかし、ここにきてゲノムインプリンティングを主としたエピジェネティクスとよばれる遺伝子発現制御の研究から、生殖医療の問題が改めて浮上し始めている。
News
腐った卵のにおいのガスで血流を制御
筋肉を弛緩させる硫化水素がないと、血圧が上昇する。
セロハンテープからX線が発生
日用品がもつ不思議な性質
Snapshot
緑色に光るブタ
暗闇で不気味に光るこれらのブタは、緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子を導入して作り出されたものである。2008年のノーベル化学賞は、このGFPの発見者たちに授与された。
英語でNature
HIV-1ワクチンが失敗した原因はこれだったのか?
2008年11月、厚生労働省のエイズ動向委員会は、日本でのHIV感染者数が、統計を取り始めた1985年以降の累計で1万人を突破したと発表しました。海外だけでなく国内でも広まり続けるHIVに対しては、まだ有効なワクチンが開発されていません。今回は、その開発状況についてのニュースを読んでみましょう。