2008年4月号Volume 5 Number 4
Editorial
News
がん増殖のかぎを握る「正常」遺伝子
普通に存在する遺伝子でありながら、特定のがんの増殖と生存に重要と考えられるものが発見されている。ヒト細胞の「機能ゲノミクス」によるふるい分けで得られたこの発見からは、腫瘍を叩くための新薬の標的が浮かび上がるかもしれない。
「ホビット」はクレチン症だった?
フロレス原人とされている「ホビット」が実はクレチン症だったのではないかとする見解を、オーストラリアの研究チームが発表した。
News Features
DARPAの今日的意義を考える
創設から半世紀を経た米国国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は、政府による技術革新の模範と考えられている。しかし、これが今日的にも重要な機関なのかどうかについては、一部から疑問の声が上がっている。Sharon Weinbergerが報告する。
ナンバー登録による遺伝学
全ゲノム相関解析によって、信頼性の高い疾患マーカーが次々と見つかっている。その現況とこの先待ち受けていることがらについて、Monya Bakerが取材報告する。
誰が誰だかわからない
中国人著者の研究論文がますます増えてきているが、彼らはその研究功績を正しく認められ、正当な認知を得ているだろうか。英文表記の際に名前が混同されるという事態によって、そうはいかなくなる可能性があると、Jane Qiuが報告する。
Japanese Author
マントル遷移層が乾燥していたことを発見!
岡山大学地球物質科学研究センターの芳野極准教授らは、地球電磁気学的に観測された値と、地球内部の高温高圧状態を再現した実験値の比較から、地球のマントル遷移層にはほぼ水分がないという結果を導き出した。地球内部に水がどのくらい存在するかは、地球の進化やマントル対流などにかかわる重要な問題である。詳細はNature 1月17日号で発表された1。芳野准教授に研究の経緯や意義、今後の展望について聞いた。
News & Views
コウモリはいつ飛んだ?
コウモリは進化の過程で、飛翔と反響定位のどちらを先に獲得したのだろうか。新たに発見された化石は、飛翔が先という説に有利な証拠となるものだ。ただしこの場合、夜間飛行のためには、何か別の方法を身につけていたと考えられる。
ナノワイヤーを利用したディスプレイの可能性
ビデオディスプレイの未来は、柔軟かつ透明である。小型で、屈曲性があり、透明な付随的電子機器を製作するための材料を見つけることはむずかしい。けれども、有望な候補が現れ始めている。
News
サンゴを死に追いやる日焼け止め
日焼け止めの成分がサンゴの共生藻類を死滅させる仕組みが明らかになった。
自然治癒するゴム
切れても自然につながるゴムが開発された。
Snapshot
ヒッグス粒子の探索に取りかかる準備
ヨーロッパの粒子物理学研究機関CERN(スイス、ジュネーブ)で、コンパクトミューオンソレノイド(CMS)検出器の最後の部品が所定の位置へと静かに下ろされている。この検出器は、CERNの次世代型粒子加速器「大ハドロン衝突器」で起こるプロトンの高エネルギー衝突の中に「標準モデル」を超える物理学を見つけ出そうとしている。
英語でNature
「一夫一妻制」のお手本なのに不貞を働くなんて!
哺乳類では非常に珍しく、プレーリーハタネズミは一夫一婦制をとるものとばかり思われていました。ところが今回、社会的には夫婦としての体裁を保ちつつも、実は、性的にはかなり奔放であることが暴かれたのです。 内容が内容なだけに、口語的でユーモアのある英語表現が多用されています。まずはWord and phrasesを参考にしながら全体に目を通し、科学用語を復習してみましょう。