2012年3月号Volume 9 Number 3

苦悩深まるカリフォルニア大学

2008年9月のリーマンショック以降、カリフォルニア大学の経営がますます悪化している。例えば学部学生の授業料は、3年半前に比べて2倍近くになろうとしている。あいかわらず日本では何十年も昔の「古き良き米国」しか伝えられないが、そろそろ「米国の真の大学事情」を直視すべき時であろう。カリフォルニア大学は米国を代表する公立大学で、医学のサンフランシスコ校やデービス校、理工学のバークレー校、材料科学のサンタバーバラ校など、10のキャンパスを抱える。これまで、危機に直面しても大学院レベルの研究や教育の水準は維持されている、というのが大方の見方だった。しかし今回の報告によると、有名教授が逃げ出したり、研究室が雨漏りしたり、アルバイトが減って3割も院生が減った学科さえあるという。

Editorials

英国では今、レベソン委員会によって、ジャーナリズムに関する綿密な調査が進められている。科学者はこの機会を生かし、意図的報道(agenda-driven journalism, 多くは悪意に基づく報道)に対して反撃すべきだ。

デンマーク新政権は、緊縮財政ゆえに、市民参加型のテクノロジーアセスメントを廃止しようとしているが、それは大きな間違いである。

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News

3年前、UCLAの研究者が実験中に死亡した事故について、研究室の責任者である化学者と大学が刑事告発された。米国で、大学での実験中の事故が刑事告発に発展した初めてのケースであろう。

「パンダの親指」として知られる骨が、ゾウでは巨体を支えるハイヒールのかかとの役目をしている。

解を1つしか持たない数独問題の作成には、少なくとも17個のヒントが必要であることが証明された。

米国では、政府機関と学会が研究者に起業を指南して、新しい雇用を生み出そうとしている。

独立に回転する大小2つの同心球体と、その間に満たされた13tの液体ナトリウムからなる実験装置は、地球内部のダイナモ作用を再現すると期待されている。

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News Features

体外離脱、つまり自分の身体を離れて外から見ているような錯覚を、科学的方法論としてきちんと生み出すことが可能になった。これを実現したのがスウェーデンの神経科学者Henrik Ehrssonだ。彼の研究から今、人間についてこれまで想像もつかなかった謎解きが始まりつつある。

ドイツ人研究者Oliver Brüstleは、10年以上もヒトES細胞関連の特許について闘ってきた。しかし、欧州司法裁判所が下したのは、思いも寄らぬ厳しい判決だった。

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Japanese Author

ヒトの遺伝子は2万個ほどしかないが、それらを効率よく使うシステムとしてさまざまな仕組みが知られている。最近このようなシステムの1つとして、後天的にDNAや染色体の開き具合を調節するエピゲノムが注目されるようになってきた。このエピゲノム制御のカギを握るのは、DNAやヒストンの一部に施される化学修飾だ。東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授は、ある酵素に「小さな糖」が付加されることで、化学修飾のスイッチが制御されていることを突き止めた。

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News & Views

in vitroで臓器の発生を再現することは難しい。特に、組織間の相互作用が不可欠である場合にはきわめて困難である。にもかかわらず、in vitroで下垂体の発生を再現させることができた。

ガンマ線バーストは、宇宙のある狭い領域から大量のガンマ線が短時間に放出される現象だ。しかし、その中には、広く認められた理論モデルと矛盾する謎の現象もある。そんな1つが「クリスマスガンマ線バースト」だ。今回2つの研究チームが、このバースト現象を説明する全く異なるモデルをそれぞれ報告した。

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News Scan

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