2012年4月号Volume 9 Number 4
ケプラー望遠鏡が星の震動を観測
ケプラー宇宙望遠鏡の活躍はめざましく、とうとう、地球とほぼ同じ大きさの惑星を突き止めた(Nature 2月12日号)。ところが、このケプラー望遠鏡は、たまたま、恒星の振動(星震)をうまく観測できる条件を備えており、この幸運を利用して、はるか彼方の恒星の内部が、詳しくわかってきた。まず、星震データから、恒星の質量が、天体物理学の予想よりかなり低めであることが明らかになった。さらに、赤色巨星の観測により、水素がどこまで燃え尽きているのか、その進化段階を明確に把握することにも成功した。
Editorials
フランスが原子力発電所の安全対策を強化
福島原発事故の影響が残る中、フランスの原子力発電所の安全性に関して、すがすがしいほど率直で前向きな報告書が発表された。
Research Highlights
News
遺伝子に刻まれた知能
小児期から老年期までの認知機能の安定性を追跡した研究から、認知機能に与える遺伝的影響の程度が明らかに。
赤ワインはなぜ健康によいか
赤ワインの成分レスベラトロールの作用機序について、新たな見解が。
海藻で作るバイオ燃料
遺伝子組み換え大腸菌により、海藻から直接エタノールを生産することが可能に。
ようやく力を発揮し始めたジェミニ天文台
最新の補償光学装置を備え、最先端の天文台によみがえった。
ダークエネルギーの大問題
宇宙の銀河を観測すると、ダークエネルギーがあって宇宙膨張を加速させているように見えるが、宇宙の長い歴史において、ダークエネルギーが一定だったかどうかは不明だ。それを探る研究が始まった。
米国を超えるアジアの科学技術投資
日本を含むアジアの10の国と地域が、研究開発投資総額において、2009年にすでに米国に追いついていたことが明らかになった。
暗殺ではイランの核開発を遅らせることはできない
専門家は、イランの核開発計画を遅らせるには国際社会による制裁が最善の方法であると指摘する。
News Features
「ジャネリア・ファーム」の優雅な生活
分野の垣根を越えた研究をめざす壮大なプロジェクト、ジャネリア・ファーム。創設から5年が経過した今、その成果はいかに?
星たちが奏でる音色
NASAのケプラー宇宙望遠鏡がもたらすデータは、太陽系外惑星の探索だけでなく、星震学にも革命を起こそうとしている。赤色巨星の進化段階さえ区別できるのだ。
Comments
インフルエンザ伝播の研究は急務である
H5N1鳥インフルエンザ研究をめぐり、議論が巻き起こっている。インフルエンザ研究者、河岡義裕は、インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)を防ごうとするなら、 哺乳類で伝播する鳥インフルエンザウイルスの研究を継続することが必要だと主張する。
Free access
なぜ、NSABBは論文の一部削除を勧告したのか
H5N1インフルエンザウイルスを哺乳類の間で感染できるよう適応させた研究に関する2本の論文に対し、米国のバイオセキュリティーに関する国家科学諮問委員会(NSABB)が、手順などいくつかの詳細な情報を差し控えて公表すべきだとする勧告を出した1。1つは、ウィスコンシン大学マディソン校(米国)および東京大学医科学研究所(東京都港区)に所属する河岡義裕の研究チームの論文で、赤血球凝集素(HA)の型の1つであるH5と、過去にパンデミックを起こしたヒトH1N1ウイルス由来の遺伝子群とを組み合わせたウイルスを作製したところ、ウイルスが哺乳類であるフェレットの間で飛沫感染するようになったことを示している2。もう1つは、エラスムス医療センター(オランダ・ロッテルダム)のRon Fouchierの研究チームの論文で、高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスを哺乳類に感染できるようにする適応実験の結果を報告している3。Natureは、NSABBの厳しい勧告に際して方針を決定するため、NSABBに、河岡チームの論文に関して今回の結論に至った理由の説明を求めた。これに対し、NSABBの委員長代理であるPaul S. Keimが同委員会の意見をまとめ、回答を寄せた。
Japanese Author
セントロメアの研究からヒストンと似た新規のタンパク質が見つかった
長い染色体DNA分子の中ほどに「セントロメア」と呼ばれる場所があり、細胞分裂で重要な働きをしている。国立遺伝学研究所の深川竜郎教授は、DNA上でセントロメアがどのように機能するのか研究している。今回、ヒストンに似たタンパク質が、その機能構築の決定にかかわっていることを発見した。遺伝現象におけるヒストンコードの役割が近年注目されているが、ヒストン以外のタンパク質がかかわる新規のコードが存在しているのかもしれない。
News & Views
トカゲの尻尾の役割
綱渡りでは、バランスをとるために長い棒を使う。ジャンプするアガマトカゲも、空中で尾をバランス棒と同じように使っているらしい。それだけではない。恐竜の中にも、同じことをするものがいた可能性があるという。
高エネルギーの原子X線レーザーを実現
レーザーの歴史が半世紀を超えた今、レーザー開発者たちの夢がまた1つ実現した。原子の状態遷移によるレーザーとしては従来よりもずっと高い、キロ電子ボルト領域の光子エネルギーを持つ、X線レーザーだ。
News Scan
漂流する大震災の瓦礫
ハワイ諸島に流れ着いてサンゴ礁を害する心配がある
一夜漬けはやめよう
間隔を変えて繰り返すのが最良の学習法らしい
Advertisement