2012年7月号Volume 9 Number 7

病原体が風で運ばれる?

川崎病は、川崎富作博士が1960年に発見した病気で、主に5歳未満の乳幼児が罹患する。半世紀以上経過した現在も、その原因は不明だ。こうした中で、「川崎病の病原体は、中央アジアから日本へ、さらに日本から太平洋を渡って米国に、風に乗って運ばれているのではないか」という大胆な仮説が登場している。日本における川崎病の患者発生数は、北西から(中央アジアから)の風の風速とほぼ相関しており、感染症であることを示す有力な状況証拠といえる。インフルエンザなど、風で運ばれる病原体は他にも可能性がある。

Editorials

Natureの調査で、中国における未承認幹細胞治療の市場規模が明らかになった。誇大な宣伝や非現実的な文句が氾濫し、幹細胞治療の真の将来性が損なわれる懸念がある。

基礎科学といえども、成果の利用の仕方によっては、有益にも有害にもなりうる。両者のバランスについては率直な議論が必要で、何よりも、議論の口火は科学者自身が切らねばならない。

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Research Highlights

気候変動によって、サンゴ礁生態系を構成する生物種が変わる可能性は高いが、それでもサンゴ礁全体が消滅することはなさそうだ。

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News

チベット高原は地球上で3番目に多くの氷が貯蔵されている「第三の極」だ。ここの氷河に気候変動がどう影響しているかを探るため、アジアを中心とした国際プログラムが開始される。

英国では大学に博士トレーニングセンターを設置し、将来の研究室運営や学術機関以外でのキャリアに備えた教育が行われている。

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News Features

原因不明とされる川崎病の病原体は、大気上空の気流に乗って太平洋を渡っている可能性がある。1960年代に大ヒットしたボブ・ディランの「風に吹かれて」の歌詞にあるように、答えはまさに、風の中にあるのかもしれない。

植物学という学問分野は、わずか数人のプラントハンター(植物採集家)によって形作られた。現在、プラントハンターは姿を消しつつあり、後継者も先行き不透明だ。

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Japanese Author

切断すると2個体になるプラナリアやちぎれた足が生えるイモリなど、下等動物には、体のあちこちが再生するものがいる。哺乳類でも、線維芽細胞を特殊な薬剤で処理すると脂肪細胞様になることなどが知られるが、高等動物細胞の分化や脱分化のメカニズムには不明な点が多かった。理化学研究所オミックス基盤研究領域の鈴木治和プロジェクトディレクターは、細胞が特定の機能を発揮するために必要な転写因子とそのネットワークを体系的に抽出する技術を開発。細胞に「別の細胞の機能を果たすための転写ネットワーク」を移植することで、iPS細胞などの幹細胞を経ずに、機能を転換させることに成功した。

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News & Views

鳥インフルエンザH5N1ウイルス由来の赤血球凝集素(HA)タンパク質をもとに、遺伝子改変インフルエンザウイルスが作成され、わずか4つの変異によってフェレット間で伝播するように変わることが明らかになった。このことは、ヒトでのパンデミックが鳥から生じる可能性を強く示唆している。

発生過程の臓器は、変わりゆく生命体のニーズを満たすため、ダイナミックに適応・変化する。ゼブラフィッシュを用いた研究で、筋肉の意外な成長パターンによって心臓が再構築されている事実がわかった。

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News Scan

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