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Nature Video活用事例

彗星は太陽系の歴史を知っている

Three things Rosetta taught us about Comet 67P

A year ago, the Rosetta Mission landed a probe on a comet - the first time this feat had been achieved. Rosetta has since revealed a whole load of fascinating facts about Comet 67P/Churyumov–Gerasimenko. Here are three things we’ve discovered about the comet so far, as well as three mysteries we have yet to solve… Read Nature’s article about the end of the mission here: http://www.nature.com/news/historic-r... Find out more about the Rosetta Mission here: http://sci.esa.int/rosetta/

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人類初の彗星直接観測

彗星は「核」と呼ばれる固体となった氷や塵のかたまりの部分と、それを包んでいるガスや塵でできた「コマ」、それに明るく輝く「尾」でできている。

ESAが2004年3月に打ち上げたロゼッタは地球から5億キロメートル離れたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に実に10年をかけて接近した。2014年11月には彗星を詳細に探査するための着陸機フィラエを投下し、フィラエは人類史上はじめて彗星に着陸し、直接観測することのできた探査機となった。この観測により、さまざまな新事実がもたらされた。

2016年4月のESAの発表によると、ロゼッタは現在も彗星の観測を続けており、太陽からの熱によって彗星表面の古い物質が剥ぎ取られ、その下の新しい面が現れていることを明らかにしている。

彗星について明らかになったこと

まずはその奇妙な形。風呂場で見かけるアヒルのおもちゃのような、2つの球体が組み合わされた姿をはっきりと捉えた。さらに詳細な分析で、彗星は塵や氷でできたタマネギ状の層構造をなしており、2つの球体の中心部には密度の高い領域が存在することが明らかになった。このことは、この彗星はもともと別の天体が合体して形成されたことを示している。

彗星からはさまざまな成分を含んだガスが放出されていることも明らかになった。これらのガスは彗星が最初に形成された当時の成分が核の中に閉じ込められていたものと考えられ、太陽系が形成される以前の低温の環境で形成されたものである。

さらに、彗星を構成している水は、地球にある水とは大きく異なっていることが明らかにされた。水は水素と酸素からなる化合物である。この水素には、中性子をもたない「軽い」水素(1H)と、中性子を1個もつ「重い」水素(重水素;2H)があり、地球上の水素全体に占める2Hの存在比率は0.015%である。しかし、今回の観測結果からチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星でのこの値は、地球のおよそ3倍で、大きくかけ離れていることがわかった。このことは、地球上の水の起源と彗星の水の起源が異なっていることを示唆する。

彗星に残された謎

密度の測定によると、彗星は非常に軽く柔らかいことが明らかになったが、その一方で、ハンマーで叩いても割れないほどの固い部分も存在することがわかった。着陸機フィラエが着地したとき、厚さ数センチの柔らかい層に接触した後、氷と思われる固い部分に停止した。フィラエが表面の氷を割るために使ったハンマーが壊れてしまうほど、この氷は固かった。なぜ彗星の表面がこんなにも固いのか、まだわかっていない。

ロゼッタは質量分析計で彗星の化学組成を測定した結果、彗星には想定された量を超える大量の酸素分子が存在することが確認された。現在の太陽系形成モデルでは、こうしたことが起こるような状況は予測されず、モデルを再考しなければならないかも知れない。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は海王星よりも遠くのカイパーベルトと呼ばれる領域で生まれ、その後太陽系の内側に移動した。もっとも遠いところで木星の軌道付近となる彗星の集団「木星族」に分類されている。同じ木星族に属するハートレイ第2彗星の水の成分がかつて調べられたことがあったが、この水は地球の水に近い重水素の比率をもっていた。このことは同じ木星族の彗星であっても、もともとは別のところで形成された可能性があることを示している。

学生との議論

Credit: Lisa-Blue/E+/Getty

地球の水はどこから来たのか

「彗星の水と地球の水は起源が違うらしい」ということから、地球の水の起源が話題になった。生命活動を支える水の話題は、環境問題と社会の関わりを学ぶ学生にとっては関心を引く問題であろう。地球の水起源を調べると、①水を含む小惑星が地球に降り注いだ、②地球を形成した岩石中に水を含む鉱物が含まれていた、③原始太陽の周りのガス円盤中の水素と地球の岩石中の酸素から合成された、などの説がある。

太陽系が形成されて地球が球体になったときには地表の水はすべて蒸発したと考えられ、地球の水はその後、宇宙からもたらされた可能性が高い。それが彗星だったのか小惑星だったのかは議論のあるところだが、今回の彗星の観測によりカイパーベルトを起源とする彗星が水をもたらしたとは考えにくい。地球近傍の小惑星には、地球上の重水素の比率と似た水をもつ小惑星が見つかっており、これらが地球の水の起源だという説が有力だ。原始太陽のガス円盤から水が合成されたという説は、円盤ガスがどれほど地球に残っていたかどうかが鍵になるが、まだよくわかっていない。今後、より多くの彗星観測や太陽系外惑星系の観測などにより惑星形成モデルが明確になれば、地球の水の起源も明らかにされるに違いない。

学生からのコメント

科学の研究は、新しい観測事実が次々と発見されることで、それらの発見が次の観測に結びつき、すべての事実が一本の糸のように論理的に結びつけられていくことを改めて実感した。(渡邊 航)

彗星の観測映像を見て、あのような岩と氷の固まりが地球から見ると美しく見えるということが不思議でたまらない。残念ながら彗星をこの目で見たことはないけれども、太陽の光の神秘を感じた。(石塚 克己)

Nature ダイジェスト で詳しく読む

彗星で大量の酸素分子見つかる
  • Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160102

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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Nature ダイジェストISSN 2424-0702 (online) ISSN 2189-7778 (print)