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Nature Video活用事例

大気の二酸化炭素量に影響を及ぼしたゴジラ・エルニーニョ

How many trees are there in the world?

It’s a simple question: how many trees are there on Earth? The answer required 421,529 measurements from fifty countries on six continents. Now this new data has been combined to produce a stunning visualisation of our planet as you’ve never seen it before. Find the full paper on mapping tree density here.

その他の Nature Video

地球上はどれだけの木があるだろう?

一つの森には、何本の木があるのだろう? そして地球上には、どれだけの木があるだろうか? 現在、私たちが知っているその答えは、地球には3兆400億本の木が存在するということだ。この数値は、これまで人工衛星の画像にのみ基づいて推定されていた値のおよそ8倍である。

さらに私たちは、陸地がどれだけ植物に覆われているかだけでなく、森林の密度がどれだけであるかというデータも手に入れた。これらの新しい計測値は、数千人の人々が世界中の森の木を数え上げることによって得られたものだ。映像では、それぞれの場所での森林の平均密度が、緑色の線の高さで表現されている。亜寒帯は地球上でもっとも木が密集しているエリアだということがわかるだろう。しかし、地球上の木のほぼ半分は、広大な熱帯地域と亜熱帯地域の森林にある。

このようなデータは、絶滅危惧種がどこで生存していけるか、また生態系で水がどのように循環しているか、さらにどれだけの二酸化炭素が大気中から吸収されるかを知ることに役立ちそうだ。そして、地球上の森林を保護し、さらに増やしていくために私たちは何をすべきかということに対しても役立つはずだ。

人間による開発で、現在、1年あたり1000万本の木を失っている。地球上の木を、一人あたりにするとおよそ400本になるが、それらの木を、毎年1.4本ずつ失っていることになるのだ。私たちがこの状況で生活し続ければ、もうすぐ森林浴を楽しむことはより難しくなる。

文明が地球の環境に手をつけることのなかった数千年前、地球上には現在の2倍の量の木があった。たとえば、ヨーロッパの大部分は一つの大きな森だったのだ。世界中で行われている植樹の取り組みで目標をより的確にし、3兆400億本の木を共有する私たちの地球に関する基本的な理解を変えるだろう。

エルニーニョと二酸化炭素

2015年の初夏に発生したエルニーニョ現象は、2016年には終息したものの、その規模は観測史上最大とされ、ゴジラ・エルニーニョなどと呼ばれた。エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南アメリカ大陸沿岸にかけての海面水温が平年より高い状態が1年ほど続く現象をいい、数年おきに発生することが知られている。エルニーニョ現象はこの地域だけではなく、全地球規模での気象変化を引き起こす。たとえば、西太平洋熱帯域の海面水温が低下し、積乱雲の活動が弱まるため、それに連動して日本付近では夏には太平洋高気圧の勢力が弱まり、気温が低く、曇りや雨の日が多くなる。また、冬には西高東低の気圧配置が弱まるため、気温が高くなる傾向にあるとされている。

ゴジラ・エルニーニョの発生によって、2015年のアジア・南米・アフリカでの大気中の二酸化炭素放出量が、例年と比べてどのように変化したかという研究が発表されている。研究によると、これらの森林の豊富な地域で、いずれも二酸化炭素放出量が増加した。

二酸化炭素の増減は、生物の呼吸、光合成、火災などに左右される。3つの地域の放出量増加は、火災の増加(東南アジア)、干ばつによる植物の成長の阻害(アマゾン)、枯れた植物の自然分解による二酸化炭素発生(アフリカ)などとそれぞれの地域で理由は異なっている。成果を発表した研究者によると、今後も地球温暖化が進めば、化石燃料の燃焼で放出される二酸化炭素を熱帯地域の植物が吸収する効果が弱まっていく可能性があると指摘する。

学生との議論

Credit: Lisa-Blue/E+/Getty

「温室効果ガス」はニュースでもよく聞く言葉だ。果たして温室効果ガスをどれだけ理解しているだろうか。大気中の二酸化炭素は地表からの赤外線を吸収し、大気中に熱を蓄える。このような性質のガスを温室効果ガスといい、二酸化炭素だけではない。京都議定書で排出量の削減対象となっているものには、二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素・ハイドロフルオロカーボン類・パーフルオロカーボン類・六フッ化水素がある。これらのうち、二酸化炭素の影響がもっとも大きいと考えられている。

石油や石炭の形で地中に保存されていた炭素は、エネルギー源として燃焼されることで気体の二酸化炭素となり、空気中に放出される。この二酸化炭素は、植物の光合成によって再び植物体内に蓄えられ、炭素が地球上を循環する。植物の保護・育成が地球温暖化対策に重要なのは、この循環のはたらきを担っているからだ。

ほかにもメタンや水蒸気も温室効果ガスとしてはたらく。自然界でメタンは沼や池などの枯れた植物が微生物で分解されて発生するほか、牛などの家畜のげっぷなども発生源となる。身の回りの物質にどのような性質があるかを改めて調べることも環境に配慮する一歩になるかもしれない。

学生からのコメント

ようやく各国が協力して取り組む中で、米トランプ政権はパリ協定から離脱した。海水面上昇や異常気象、平均気温の上昇など「地球の崩壊」ともいえる現象が顕著に表れている今、米国内の政治問題では済まされない問題だと思っている。(小林 稜)

植樹の成果が現れるものでないことは明らかなので、まずは各自が二酸化炭素を出さない生活を心がけることが効果的だと思った。電気を節約したり、自動車のエンジンをまめに止めたり、できることは意外とたくさんあるのではないか。(山口 陽向)

Nature ダイジェスト で詳しく読む

エルニーニョ現象で熱帯の森林が二酸化炭素の放出源に
  • Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171111

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Nature ダイジェストISSN 2424-0702 (online) ISSN 2189-7778 (print)