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Nature Video活用事例

生物にとっても住みよい都市をつくるために

How to help pollinators in cities

Researchers have performed the most comprehensive study to date on pollinator feeding habits in cities. They document what plants pollinators prefer and use computer models to predict the best ways to help them thrive.

Read the original research paper here: https://www.nature.com/articles/s4155...

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地球上には多種多様な生物種が互いにつながりをもちながら生息している。これらのバランスが崩れると、生態系や環境に影響が及び、やがて種の絶滅につながる。この生物多様性を守ることは、私たち人類が今後、生物資源として食料や医薬品を入手したりするだけでなく、生存基盤を確立する上でも非常に重要である。

植物が実を結ぶためには、昆虫や鳥など花粉をほかの花まで運んでもらう必要がある。これらの花粉を運ぶ生き物をポリネーターと呼ぶが、特に大都市での仕事はやりにくいらしい。土地の使われ方の変化は、花粉を運ぶ昆虫にとって脅威にもなる。なぜなら花粉が運ばれなければ植物は子孫を残すことができなくなる。それだけでなく、ポリネーターの昆虫たちにとっても花粉は貴重な栄養源であり、花粉にありつけなければ子孫を残すこともできなくなるからだ。

しかし、イギリスの4つの都市(ブリストル、レディング、リーズ、エディンバラ)で行われた研究によると、花粉を運ぶ昆虫たちにとって進みゆく都市化が必ずしも危機的な状況を生み出すわけではない。

土地の利用形態と生物の関係

生態学者の研究チームは、ポリネーターが活動しない建物、道路、水路を除いて、都市部によく見られる9種類の土地利用区分(①家庭菜園、②庭園、③自然保護地域、④舗装域、⑤道端、⑥公園、⑦歩道、⑧墓地、⑨その他の緑地)に着目した。

まず、研究者たちはそれぞれの土地利用区分におけるポリネーターと植物の総数を計測した。植物の個体数が多く多様性に富んでいれば、ポリネーターの多様性も豊かなものになる。これは意外なことではない。

庭園には変化に富んだ数多くのポリネーターが存在するが、すべての園芸植物がポリネーターに好まれるわけではない。アジサイ、ヒナギク、ワスレナグサはポリネーターにそれほど好まれない。一方でしばしば庭師が引き抜いてしまうタンポポ、キイチゴ、キンポウゲなどはポリネーターのお気に入りらしい。

生物に住みよい土地利用を探す

続いて研究者たちは、ポリネーター集団を維持するために、どのような土地利用が望ましいかを調べた。研究では、ポリネーターのより強固なネットワークの構築、言い換えればもっとも種の損失の少ない土地利用がどのようなものであるかを検証するための数値モデルが作成された。

研究者たちは、より多くの敷地を家庭菜園に割り当てたとき、もっとも強固なポリネーターのネットワークが構築されることを明らかにした。家庭菜園は都市の土地利用では1パーセントにも満たない。家庭菜園では果物や野菜、それに雑草などの豊富な種類の花が咲く。その多様性が、ポリネーターの多様性を支えているようだ。

研究者たちは、ポリネーターのネットワークを強固にするほかの方法はあるのか、ということについても研究を進めた。彼らのシミュレーション結果によれば、公園でより多くの花を栽培したり、道端やさまざまな緑地に野生の草花を育てることで達成することが可能だという。

いくつかの単純な方策で、世界中の都市のポリネーターを手助けできると研究者は話している。家庭菜園を広め、公園により多くの草花を植えよう。そして雑草や芝生をむやみに刈り取ることはやめよう。

学生との議論

Credit: Lisa-Blue/E+/Getty

ポリネーターとしてはたらく、人類と関わりの深い昆虫にミツバチがいる。近年、ミツバチが巣に帰ることのできなくなる「ミツバチいないいない病」の原因として、ネオニコチノイド系の農薬の影響が考えられており、欧州ではこの農薬の使用が規制されるなど、ミツバチは農産物にとって大きな役割を担っている。また、ミツバチは農薬などに汚染されている環境では生息できないため、地域の自然環境の豊かさを示す「環境指標生物」でもある。

日本を代表する繁華街の銀座で、ミツバチが飼われていることをご存知だろうか。東京都心・銀座でミツバチを育てる活動が2006年からNPO法人・銀座ミツバチプロジェクトにより銀座のビルの屋上で養蜂が行われ、ハチミツも収穫され販売されている。このような活動は国内の都市にも広がりを見せている。

都心という環境の中でも、建物の屋上の緑化などの工夫により、さまざまな植物を育てることで生物多様性を保つことができるという実証である。生物多様性を保つために、一人ひとりができることを考えることが大切ではないだろうか。

学生からのコメント

世界中で都市化が進む中で、いかに緑を取り入れていくかは都市計画や建築計画で大きな課題だ。虫たちの自然界での役割を知ることで、多くの人が自然への理解を深めることこそ必要ではないだろうか。また、ほかの生物のことも考える余裕をもちながら生活していきたいと思った。(小澤 朋実)

いつもは煩わしく感じてしまうハチなどの昆虫も、自然界ではポリネーターとしての役割を果たしている。改めて考えてみると、自分の家の庭や道端の雑草も、ポリネーターのネットワークを支えていることになる。ポリネーターを効果的に助ける都市開発を考えるべきだと感じた。(浅沼 卓)

Nature ダイジェスト で詳しく読む

コンクリート・ジャングルの生態学
  • Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130312

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Nature ダイジェストISSN 2424-0702 (online) ISSN 2189-7778 (print)