Article 線虫ゲノム:線虫Pristionchus pacificusゲノム情報から線虫の生活様式と寄生性についての特異な様子がわかる 2008年10月1日 Nature Genetics 40, 10 doi: 10.1038/ng.227 線虫Pristionchus pacificusゲノムのドラフト配列を発表する。この種は甲虫に寄生し、進化生物学においてモデル生物となるものである。P. pacificusのゲノムは169 Mbで、23,500個のタンパク質コード遺伝子をもつと推定され、線虫Caenorhabditis elegansやヒトの寄生虫であるBrugia malayiよりも大きいゲノムサイズをもつ。C. elegansに比べて、P. pacificusのゲノムには、シトクロームP450酵素、グルコシル転移酵素、硫酸基転移酵素、ABCトランスポーターなどをコードする遺伝子が多く存在し、その多くは実験的にも有意であることが示された。P. pacificusのゲノムにはセルラーゼとダイアポージンをコードする遺伝子があり、セルラーゼの活性はP. pacificusの分泌物中に検出されることから、セルラーゼは植物の寄生虫ばかりでなく線虫にまであることが示された。P. pacificusには、比較的多数の解毒や分解にかかわる酵素が備わっていて、このことは死骸を処理する生活様式にあった寄生生活への前適応を示している可能性がある。このように生態が顕著に異なる3種の線虫について比較ゲノム解析を行うと、ゲノム構造と生活様式との関連を解明するという他では得られない機会に恵まれる。 Full text PDF 目次へ戻る