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造血幹細胞:DNAメチル化は、造血幹細胞の多分化能を維持し、骨髄赤血球細胞系列への分化に限定されることのないようにしている

Nature Genetics 41, 11 doi: 10.1038/ng.463

DNAメチル化は、クロマチン動態上のエピジェネティックな標識であり、自己複製する幹細胞が分化していく間に著しく変化する。ところが、DNAメチル化の変化によって幹細胞の細胞運命が決まるのか、あるいは細胞運命の決定によってこの変化が生じるのかは、いまだ明らかになっていない。本論文では、造血幹細胞(HSC)の、自己複製か分化かという二者択一の機能的なプログラムが、メチル化のレベルの段階的な違いによって制御されていることを示す。恒常的なメチル化はHSCの自己複製には必須であるが、ホーミング、細胞周期制御、アポトーシスの抑制には不要であった。注目すべきは、DNAメチルトランスフェラーゼ1の活性を低下させたマウスのHSCは、骨髄赤血球系列への分化を調節する主要な因子の抑制が起こらないため、リンパ球系列ではなく、骨髄赤血球系列の子孫細胞へと分化したことである。同様に、白血病における幹細胞の機能もメチル化の量的効果による制御を受けた。これらの結果は、DNAメチル化が、主要な分化プログラムによって幹細胞が早期に活性化しないようにするために欠くことのできないエピジェネティックな機構であることを明らかにし、また、メチル化の動態によって、組織恒常性(ホメオスタシス)やがんにおいて幹細胞が発揮する機能が決まることを示唆している。

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