Analysis X連鎖遺伝子とRNA塩基配列決定:RNA塩基配列決定によって活性型X染色体の遺伝子量補償は観察されないことが明らかになった 2010年12月1日 Nature Genetics 42, 12 doi: 10.1038/ng.711 哺乳類の細胞では雌も雄も、常染色体は対をなすが、活性のあるX染色体は1本しかない。この事実については、活性型対立遺伝子は、X連鎖性のものは常染色体のものより2倍多く発現されているので、その結果X染色体と常染色体の遺伝子量のバランスがとられているという、〔「Ohno(大野乾)の法則」として知られる〕仮説が立てられている。この仮説は、マイクロアレイを用いて解析された遺伝子発現レベルが、X染色体1本の場合と常染色体2本の場合で差がみられないという知見によって裏付けられた〔X染色体1本と常染色体対で遺伝子発現レベルの比(X:AA)がほぼ1〕。本論文では、RNA塩基配列決定(RNA-Seq)はマイクロアレイ発現解析よりも検出感度が高いこと、そしてRNA-Seqのデータによると、ヒトおよびマウスにおけるX:AAの値がおよそ0.5であることが判明したので報告する。線虫Caenorhabditis elegansのうち雌雄同体のものでは、X:AAの値が幼虫におけるおよそ1から成虫のおよそ0.5へと次第に減少した。プロテオーム解析のデータは、RNA-Seqのデータと一致しており、さらにタンパク質レベルではX連鎖タンパク質の増量がみられないことを示唆していた。今回の研究成果はOhnoの法則を否定するものであり、性染色体の進化における遺伝子量補償について、現行モデルの大幅な見直しの必要性を示唆するものである。 Full text PDF 目次へ戻る