Article クラミジア:さまざまなクラミジア・トラコマチス株の全ゲノム解析から、現在の臨床上の株の識別では見逃されている系統遺伝学上の関係が明らかになった 2012年4月1日 Nature Genetics 44, 4 doi: 10.1038/ng.2214 クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis、トラコーマを引き起こすクラミジア)は、トラコーマと性感染症の両方の原因となる病原体で、世界的にもかなりの人数が病気になり経済的な損失を引き起こしている。こういう状況にもかかわらず、この菌の集団および進化遺伝学に関する知見はほとんど得られていない。この論文では、時間的にも地理的にも異なるさまざまな試料から得たトラコーマと鼠径リンパ肉芽腫(LGV)の2つの生物型の両方を代表するC. trachomatis株について、全ゲノム塩基配列決定を行い、そのデータをもとにした詳細な系統樹を報告する。この結果から、クラミジアの分類に伝統的に使われてきたompA遺伝子を用いた予測に基づく系統樹構造には過ちがあることが示された。なぜなら、この領域内での広範な組み換えが、本来の関係を覆い隠してしまうからである。多くの例でompA遺伝子は、部分的あるいは全体が、生物型内および生物型間の両方の間で起こった交換によるキメラであることが示された。またもう1つの重要な診断の標的である潜在プラスミドについても、生物型内での交換や組み換えが起こっている証拠を提供する。こうした系統遺伝学的な方法を使い、流行性LGVである血清型L2bをはじめとする、眼や泌尿器やLGVを起こすC. trachomatis株において、どのように遺伝学的な交換が起こったかを示す。 Full text PDF 目次へ戻る