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転写調節:真核生物プロモーターの入出力機能についての微細構造マッピング
Nature Genetics 45, 10 doi: 10.1038/ng.2729
転写調節ネットワークが最適な機能を発揮するためには、遺伝子の発現レベルが的確に調整されていることが必須である。今回、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのPHO5プロモーター変異株を209種類作製し、転写因子Pho4の結合部位に生じた違いによってプロモーターの出力がどのように影響されるかを定量的に示すことを試みた。その結果、in vitro条件下において測定した転写因子の結合親和性から、複雑な酵母プロモーターの出力が定量的に予測できることを見つけた。すなわちプロモーターの出力は、3 kcal mol−1以下という、結合部位における親和性のわずかな変化に合わせて微妙な調節を受け得ることが判明した。この結合親和性の変化は、結合部位の配列のうち1~2塩基が変更されたことで生じ得る。今回の研究成果は、転写因子結合部位がどのように遺伝子発現を調節しているのか、結合部位がどのように進化していくのか、そして遺伝子発現を的確に調整するために結合部位がどのように使われているのかについての手がかりを与えるものである。さらに一般的な観点で言えば、転写因子のin vitroにおける結合エネルギーの全体像から、生体における酵母プロモーターの出力を正確に予測することが可能であることが明らかになった。このことは、転写調節ネットワークに関する量的モデルが実用性の高いものであることを示唆するものである。