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転写:距離を隔てたプロモーター相互作用のヒト細胞でのマッピングを高精度キャプチャーHi-Cで行う
Nature Genetics 47, 6 doi: 10.1038/ng.3286
大きなサイズのゲノムにおける転写の制御では、エンハンサーと標的プロモーターといったように、遠く離れて位置するDNA配列間での相互作用のためにループ形成が必要となることが多い。現行の染色体高次構造キャプチャー技術では、ゲノム規模における発現調節のための相互作用の情報を得るには、精度が不十分である。本論文では、改良型ゲノム高次構造解析法の1つであるキャプチャーHi-C(CHi-C)を用いて、約22,000個のプロモーターの長距離相互作用を2種類のヒトの血球細胞において調べた。その結果、プロモーターと遠隔ゲノム領域間の、距離が数百キロベースにもわたる相互作用を160万個以上同定した。これらの相互作用は、細胞種に共通のものもあれば、特異的なものもある。転写活性化状態にある遺伝子はエンハンサー様配列に密着していたが、不活性化遺伝子は、長距離サイレンサーとして機能すると思われる、これまでに特性解析されていなかった配列と相互作用していた。最後に、相互作用領域には、疾患関連性を示すSNPが多く含まれることが明らかになった。この知見は、遠隔領域に生じた変異によって疾患関連遺伝子の調節が損なわれる仕組みを示唆するものである。本研究によって、正常および異常な遺伝子発現調節の基盤となる発現調節に関わる相互作用を詳細に明らかにするための、新たな見識と活用可能な解析ツールが得られた。