Analysis

トランスクリプトーム:近傍に位置する複数のプロモーター内でのRNA代謝と選択的転写開始の原理

Nature Genetics 48, 9 doi: 10.1038/ng.3616

哺乳類のトランスクリプトームは複雑であり、広範なプロモーター活性によって形成される。さらに遺伝子プロモーターは、大部分が両方向に転写を引き起こし、正方向に進む転写とともに、上流域を逆方向に進むPROMPT(promoter upstream transcript)の転写を開始する。PROMPTは、ポリアデニル化部位の影響により、一般的に早期に転写終結が起こるが、プロモーターは集まって存在することが多いので、1つのプロモーターの両方向に転写する活性が別のプロモーターに影響を及ぼす可能性がある。本論文では、プロモーター間の距離が、それに伴うPROMPTの発現、安定性、長さと強く相関することを示す。両方向のmRNA転写を引き起こす隣接プロモーターはPROMPT形成を支持するが、ポリアデニル化部位による制限が働き、隣接プロモーターによる転写産物は同じ鎖の隣接するmRNAにまで伸長する傾向がある。これにより、mRNAの選択的転写開始部位(TSS)が誘導され、この仕組みは近接するプロモーターで、同じ方向に向かうmRNAの転写が支持される場合にも明らかに見られた。我々は、両方向の転写を行うコアプロモーター対の基本的な構成要素が、哺乳類ゲノムのTSSの豊富さと組み合わさってトランスクリプトームを形成し、そこに進化が起こると考えている。

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