エンハンサー：分割されたエンハンサーのクラスターの組成や数量がIhh（Indian hedgehog）の発生における発現を制御する

コピー数変動（CNV）は非コード配列や候補エンハンサーを含むことが多いが、これらの再編成が疾患を引き起こす仕組みはほとんど解明されていない。本論文では、IHH（Indian hedgehogをコードする）の調節領域の全体像に影響するCNVを調べた。このCNVは、頭蓋縫合早期癒合症や合多指症を含む、多発性で高度に局所的な表現型を引き起こすものである。マウスにおけるトランスジェニックレポーターやゲノム編集を用いた研究により、Ihhが、指原基、成長板、頭蓋縫合、指先端において、個々の組織特異性を持つ少なくとも9個からなる一連のエンハンサーによって調節されることが分かった。連続する数個のエンハンサーを欠失させると、頭蓋や長骨の成長異常が引き起こされることから、これらのエンハンサーは相加的に機能することが示された。一方、重複は、Ihhのエンハンサーの数量依存的な発現上昇や、誤った発現をも引き起こし、異常な指骨、縫合の癒合、合指症につながった。したがって、発生遺伝子の発現の正確な時空間的制御は、多数の場所に分かれて存在する複雑なエンハンサー集団（クラスター）によって達成されることが分かる。このような集団の組成に変化が起こると、誤った発現や疾患が引き起こされ得る。