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クロマチン:受精後のLINE-1活性化がマウス初期胚での全体的なクロマチン接近性を調節する

Nature Genetics 49, 10 doi: 10.1038/ng.3945

受精後、発生を開始するために、配偶子は再プログラム化されて全能性になる。哺乳類ゲノムのおよそ半分は、レトロトランスポゾンをはじめとする反復配列から構成されており、そうした反復配列の一部は受精後に転写される。一般に、レトロトランスポゾン活性化は、配偶子のエピジェネティックな再プログラム化の基礎となる大規模なクロマチンリモデリングの副産物だと考えられている。本論文では、標的エピゲノミクスの手法を用いて、特定のレトロトランスポゾンファミリーがクロマチン構成や発生の進行に直接の役割を担っていないかどうかを検討した。その結果、LINE-1配列の時期尚早なサイレンシングが起こると、クロマチン接近性が低下するが、持続的な活性化が起こると、発生の進行にともなって徐々に進んでいくはずのクロマチン凝縮が妨害されることが実証された。LINE-1活性化を阻止したり、そのサイレンシングを妨げたりすると、LINE-1転写産物がコードする性質とは独立に、発生速度が低下することから、LINE-1は主にクロマチンレベルで機能すると考えられた。我々のデータから、LINE-1の活性化が発生開始の際に全体的なクロマチン接近性を調節すると考えられ、また、レトロトランスポゾン活性化が発生プログラムに不可欠であることが示された。

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