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ゲノム編集:コピー数効果に対して計算上の補正を行うと、がん細胞におけるCRISPR– Cas9による必須スクリーニングの特異度が高まる
Nature Genetics 49, 12 doi: 10.1038/ng.3984
CRISPR–Cas9システムは、ゲノム編集技術に大変革をもたらした。この技術は、個別の遺伝子に対しても、また複数の機能喪失型スクリーニングにおいても有用であり、結果として、がん細胞の増殖および生存に必須の遺伝子をゲノム規模で正確に同定することを可能にしている。しかしこれまでに、Cas9によるDNA切断によって遺伝子とは無関係な増殖抑制効果が観察されるため、がん細胞の特定遺伝子への依存性を見誤ることが報告されている。すなわち、コピー数が増大した領域に偽陽性の結果を導くおそれである。そこで今回、CERESという計算手法を考案したので報告する。CERESは、CRISPR–Cas9によるがん必須遺伝子スクリーニングでの遺伝子依存性レベルを、コピー数に特異的な効果を計算上補正しながら推定する方法である。がん依存性地図(cancer dependency map)を明らかにする研究のなかで、342のがん細胞株を用いてがんに必須の遺伝子を見つけるために、ゲノム規模のCRISPR–Cas9スクリーニングを行い、そのデータをCERESで解析した。CERESを用いることで偽陽性結果が減少することが分かった。また、今回のデータセットの場合にも、今回とは異なるsgRNAライブラリーで行われた先行スクリーニングの場合にも、sgRNAの活性を推定できることが分かった。さらにこの一連のスクリーニングが、CERESによる補正を加えたとき、がんの種類に特異的な脆弱性を同定する上で有用であることを実証した。