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SWI/SNF複合体:正常状態および発がん状態のヘテロクロマチンにおけるBAF–ポリコーム複合体の拮抗の動態
Nature Genetics 49, 2 doi: 10.1038/ng.3734
ポリコーム抑制複合体(PRC)とBAF(mSWI/SNF)複合体の拮抗は、発生および疾患の両方において重要な役割を担っている。BAFのサブユニット群をコードする遺伝子の変異はヒトの悪性腫瘍の20%以上に寄与するが、主に生細胞においてBAF機能を評価するアッセイがないため、その原因となる機構は解明されていない。この問題に取り組むために、広く応用できる動員アッセイ系を開発して、それを用いることで、BAFがATP依存的にPRCを迅速に排除し、接近可能なクロマチンの形成を引き起こすことを解明した。この過程が妨げられると条件的ヘテロクロマチンの再構築が引き起こされる。意外なことに、BAFによるPRCの排除はRNAポリメラーゼII(Pol II)の占有、転写、複製なしに起こる。さらに、がん抑制因子および発がん因子の変異型BAF複合体が、PRCの排除に異なる影響を及ぼすことが分かった。これらの研究の結果から、条件的ヘテロクロマチンの解消と形成の基礎となる機構的な順序が明らかになり、また、エピジェネティックな可塑性は、BAFのPRCへの拮抗が分刻みで起こることにより提供されることが実証された。