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SWI/SNF複合体:Smarca4 ATPaseの変異は、PRC1がクロマチンから直接放出されることを妨害する
Nature Genetics 49, 2 doi: 10.1038/ng.3735
Trithorax群タンパク質とその哺乳類ホモログは、例えばBAF(mSWI/SNF)複合体の構成因子のように、ポリコーム抑制複合体(PRC)の活性に対して拮抗する活性を示すことが分かっている。この拮抗的な作用はBAFサブユニットが示す腫瘍抑制機能の基盤であり、神経発達障害の一因となると思われる。しかし、ポリコームによる発現抑制に対するBAFサブユニットの拮抗作用がどのようなメカニズムで起こっているかについては、ほとんど明らかになっていない。本論文では、BAFサブユニットに頻発する疾患関連変異が、ゲノムワイドのPRCの結合増加および活性上昇を引き起こすことを報告する。SMARCA4(BRG1としても知られる)のATPアーゼドメインに位置する点変異によって、BAFとPRC1との間の直接的な結合が失われていた。ここで、この現象はクロマチンとは無関係に起こっていた。この直接的な相互作用の消失はATPに依存して生じており、一過性の放出機序であることと矛盾しなかった。化合物誘導型近接度分析(chemical-induced proximity assay)という新しい方法を用いて、BAFがポリコーム因子を結合後数分以内に直接放出することを見つけた。つまり、発生や疾患で広く見られるBAFとPRCの拮抗作用についての新しい機序が明らかになった。