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炎症性腸疾患:全ゲノム塩基配列決定により炎症性腸疾患の遺伝的基盤を探索したところ、ADCY7に疾患との関連が見られた
Nature Genetics 49, 2 doi: 10.1038/ng.3761
炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎やクローン病の遺伝的基盤の解明を進めるため、症例4,280例の全ゲノムについて、低カバレッジの塩基配列決定を行った。そしてそのデータを、既存の塩基配列決定済み対照集団3,652例と比較して、7,350万のバリアントについて解析した。続いて、これらの配列データを用いて、新規および既存のゲノムワイド関連解析コホートのデータの補完を行い、総数で症例16,432例および対照18,843例において、およそ1,200万のバリアントについて検証した。その結果、ADCY7に0.6%の頻度で存在するミスセンスバリアントが、潰瘍性大腸炎の発症リスクを倍にすることを見つけた。統計的検出力は良好であったにもかかわらず、新たな低頻度リスクバリアントはこれ以外に同定できず、このようなバリアントが遺伝率を説明することはほとんどなかったことを明らかにした。さらに、既知のクローン病発症リスク関連遺伝子において、非常に稀少なミスセンスバリアントが重要であることを見つけた。この事実は、塩基配列決定研究をより徹底して行うことが、複合疾患の生物学的理解を深めていくことを示唆している。