Analysis
急性骨髄性白血病:知識バンクを用いた急性骨髄性白血病に対するがんの精密医療
Nature Genetics 49, 3 doi: 10.1038/ng.3756
精密医療(precision medicine)の展望の基盤となっている考えは、患者のがんの原因となっている変異が、そのがんの生物学的特徴を決め、さらには、臨床上の特徴や治療への応答をも決めているということである。しかし、患者間に見られるドライバー変異には大きな不均一性が見られることが、エビデンスに基づいた個別化がん治療の達成を複雑にしている。本論文では1,540人の急性骨髄性白血病(AML)患者のデータを再解析することにより、ゲノム-臨床データを対応させた大規模知識バンクが、いかに臨床上の判断(意思決定)を助けるかを探ってみた。包括的多段階統計モデルは緩解、再発、死亡率の見込みを正確に予測しており、このことは、がんゲノムアトラスに収められている独立した患者群のデータで確認することができた。異なる治療を行った場合の長期生存確率を比較した結果が、オンラインで検索できる形で得られるが、これが治療法決定の支援となるだろう。個別化された治療の決定により、AML患者の造血細胞移植の数を、全体の生存率を維持しながらも20~25%減らすことができた。検出力の計算から、正確な意思決定支援のためにはデータベースに数千人レベルの患者からの情報が必要であることが示されている。情報バンクは個別化した治療方針の決定を支援することが可能だが、そのためには持続的な更新、包括的コホート群、十分大きなサンプルサイズが必要である。