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ヤク:モンゴルのヤクにおける浸透性交雑の全ゲノム解析とウシ由来遺伝子の特徴解析
Nature Genetics 49, 3 doi: 10.1038/ng.3775
ヤクは高地への順応に卓越した能力を有しており、アジアの山岳地帯における経済の中心的な地位を占めている。低い標高の地域では、ヤクの頑強性とウシの生産性の両方を兼ね備えたものを得るために、ヤクとウシの雑種を作ることが頻繁に行われている。雑種のオスは不妊であるので安定的な雑種集団の確立を妨げているが、メス雑種とオスのヤクとの数世代にわたる戻し交配による遺伝子移入の影響は決して限定的なものではない。今回、我々は高密度のSNP遺伝子型判定と全ゲノム配列決定とを用いて、モンゴルのヤク76頭のゲノムにおけるウシハプロタイプについて推論した。これらのヤクは少なくともここ1,500年以上のほぼ連続的な混合を経て、ゲノムのおよそ1.3%をウシ祖先より受け継いでいた。遺伝子移入領域では神経系の発生や機能、そして特にグルタミン酸代謝と神経伝達に関連する遺伝子が豊富であった。また、Mongolian Turano牛に由来する無角の表現型に関連した新規の変異も同定した。我々の結果は、浸透性交雑がヤクの利用や育種における改良に寄与したことを示唆している。