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クロマチン:単一対立遺伝子のトポロジーから特定されたエンハンサーのハブおよびループの衝突
Nature Genetics 50, 8 doi: 10.1038/s41588-018-0161-5
クロマチンの折りたたみは、遺伝子活性といったゲノムの働きの調節に関与する。既存のコンホメーション捕捉法は、細胞集団におけるクロマチンの2点での接触を解析することでゲノムのトポロジーの特徴を明らかにしているが、個々の相互作用が同時起こっているのか競合的に起こっているのかを識別することはできない。本論文では、ナノポア塩基配列決定法を、個々の対立遺伝子の複数点接触型DNAコンホメーションの研究に適用したMC-4C(multi-contact 4C)法について示す。MC-4Cにより、協調的に起こる相互作用を、無作為あるいは競合的に起こる相互作用から区別し、細胞の一部の集団においてこれまで見逃されていた構造を突き止めることが可能になった。その結果、βグロビンスーパーエンハンサーの個々の配列が集まり、2つの遺伝子に対して同時に対応できるエンハンサーのハブを形成することが明らかになった。隣接するクロマチンドメインのループは、CTCFが結合したアンカー部分の衝突によりロゼット様の構造を形成することができ、この構造はコヒーシン制御因子WAPLを欠損する細胞において最も顕著に見られた。今回、CTCFがアンカーとなるクロマチンループの大規模な衝突は、「コヒーシンの渋滞」を反映するものと考えられる。従って、単一対立遺伝子のトポロジーの研究は、ゲノムの折りたたみや機能の基礎となる機構を理解する上で役に立つものである。