Technical Report
遺伝統計:複数の条件を持つゲノム研究において効果の推定・検証を可能にする柔軟な統計手法
Nature Genetics 51, 1 doi: 10.1038/s41588-018-0268-8
多数の条件(例えば、さまざまな処理下での遺伝子発現変動)における多数の効果を測定するゲノム研究において、これらのデータセットを解析するための新しい統計手法を紹介する。この新手法では、条件間で効果量の任意の相関を考慮に入れることにより、既存の手法を改良している。この柔軟なアプローチは、単純な割り当て、もしくは条件特異的評価と比較して検定力を増加させ、効果の見積もりを改善し、また効果量の不均一さがある中で定量的により優れた評価を可能にしている。我々は44のヒト組織において遺伝子発現[シス発現量的形質座位(eQTL)]に関連する局所的に作用するバリアントの解析を行い、これらの特性を例証することができた。我々の解析は既存のアプローチに比べてより多くのeQTLを同定しており、検定力が改良されていることを示している。また、遺伝子発現に対する効果は臓器間で広範囲に共通であるが、効果量については臓器間で大きく異なることが明らかになった。臓器で共有されるeQTLの中には、生物学的に関連する臓器のサブセット(脳関連組織など)で強い効果を示すものもあれば、ただ1つの臓器(精巣など)でのみ強い効果を示すものもある。我々の手法は広く適用可能であり、さまざまな条件に対して計算機的に扱いやすい方法であり、かつオンラインで利用可能である。