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動脈硬化:動脈硬化性の大動脈石灰化には、血管平滑筋細胞の表現型に影響を及ぼすHDAC9が関与している
Nature Genetics 51, 11 doi: 10.1038/s41588-019-0514-8
大動脈石灰化は将来発症する心血管の病気に関する独立した予測因子として重要である。腹部大動脈(n = 9417)または胸部下行大動脈(n = 8422)の石灰化の程度に関連を有するSNPを見つけるため、ゲノムワイド関連解析のメタ解析を行った。腹部大動脈石灰化とゲノム全域レベルで関連する2つの座位として、HDAC9およびRAP1GAPを同定した(P<5.0×10−8)。胸部大動脈石灰化とゲノム全域レベルで関連するSNPは検出されなかった。ヒト大動脈平滑筋細胞でHDAC9の発現を増強させたところ、石灰化が促進され、収縮性が低下した。一方、HDAC9を阻害すると、石灰化が抑制され、収縮性は増強した。ヒトの血管石灰化のモデル動物であるマトリックスGlaタンパク質欠損マウスでは、HDAC9を欠損させると大動脈石灰化が40%減少し、生存率が向上した。我々のトランスレーショナルゲノミクス研究により、腹部大動脈の石灰化に関連を有するリスク座位が初めて同定され、血管石灰化におけるHDAC9の役割が初めて明らかになった。