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X染色体不活性化:ランダム型X染色体不活性化の開始では、X染色体不活性化中心の核での位置や対合は重要な決定要因ではない

Nature Genetics 51, 2 doi: 10.1038/s41588-018-0305-7

X染色体不活性化(XCI)の際には、2つのX染色体不活性化中心(Xic)の1つが、ノンコーディングRNAであるXistの発現を上昇させて、染色体のサイレンシングをシスに開始させる。Xistを発現上昇させるために、1つのXicが選択される仕組みは分かっていない。提案されているモデルでは、1つのXicの核膜への局在や、相同なXicの一過性の対合に続いてXistのアンチセンスが生じるXite/Tsix座位で起こる転写因子の非対称性分布が挙げられている。本論文では、TetO/TetR系を用いて、分化中のマウス胚性幹細胞の核ラミナにXicを1つあるいは両方、誘導性に位置させることができた。その結果、核ラミナへの局在と相同なXicの対合の減少はいずれもXistの単一対立遺伝子性の発現上昇あるいは選択に影響を与えないことが分かった。また、一過性の対合は両対立遺伝子性の発現に関連しており、これはXist/Tsix座位だけでなく、XCIを回避できた他のX連鎖座位でも見られることが分かった。さらに、Xicの対合は波状のパターンに起こることが示され、これは分化初期のゲノムの動態や全体的な調節プログラムの開始に一致していた。

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