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エピジェネティクス:ヒストンH3.3のリシン4は胚性幹細胞の分化、調節領域でのヒストン密度および転写の正確性に必要である
Nature Genetics 52, 3 doi: 10.1038/s41588-020-0586-5
ヒストンH3のリシン4(H3K4)やリシン36(H3K36)を修飾する酵素の変異は、ヒト疾患と関連しているが、哺乳類でのこれらの残基の役割は不明である。我々は、ヒストンバリアントH3.3中のK4あるいはK36にアラニン変異を導入し、K4A変異がマウスの胚性幹細胞(ESC)の分化を阻害し、広範囲の遺伝子発現変化を引き起こすことを明らかにした。K4Aは、特にESCプロモーターにおいてH3.3を大幅に減少させると同時に、リモデリング因子の結合を低下させ、RNAポリメラーゼII(Pol II)活性を増加させた。H3.3K4Aの減少した調節領域ではヒストン修飾の変化が見られ、遺伝子発現と相関するエンハンサー活性が変化していた。対照的に、K36A変異ではH3.3の蓄積は変化せず、分化後期の遺伝子発現に影響が見られた。このようにH3K4は、Pol II活性の厳密な調節が正常なESC分化に必要とされる調節領域において、ヌクレオソームの蓄積、ヒストンの代謝回転、クロマチンリモデリング因子の結合に必要とされる。