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エピジェネティック:がんにおける転写状態とエピジェネティック状態のクローン性維持に関する単一細胞解析

Nature Genetics 52, 7 doi: 10.1038/s41588-020-0645-y

クローン性調節プログラムの伝播は、がん発生の一因となる。エピジェネティック機構が遺伝学的ドライバーと相互作用してこの過程を形作る仕組みについては、よく分かっていない。今回我々は、転写とDNAメチル化の一細胞解析とLuria–Delbrück実験デザインを組み合わせて、複数のがん細胞タイプにクローン的に安定したエピジェネティック記憶が存在することを明らかにした。クローン性大腸がん細胞集団の縦断的な転写解析や遺伝学的解析からは、一見すると遺伝的変動とは無関係に見える、上皮間葉転換の転写的アイデンティティーのスペクトラムが徐々に移行していく様子が明らかになった。DNAメチル化の全体像は、これらのアイデンティティーと相関するだけでなく、これとは独立した規則正しいメチル化喪失過程も反映している。メチル化の変動は、ほとんどの場合、広範なトランス作用因子の影響として説明できる。ただし、特定のクラスのプロモーター(特に、がん精巣抗原)では、脱抑制はシスのメチル化喪失と相関があり、おそらくこの喪失により引き起こされる。本研究は、がん細胞における遺伝学的なサブクローン構造が、エピジェネティック記憶により多様性を獲得し得る仕組みを示している。

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